欧州委のスタートアップ支援構想、25カ国が支持

欧州委員会は19日、EU全体でスタートアップ企業が起業しやすい環境を整備し、世界的デジタル企業を輩出している米国や中国などに追いつくための具体策をまとめた「EUスタートアップ国家基準(EU Start-up Nations Standard=SNS)」を発表した。ストックオプションやビザの発給などに関するルールを改定し、スタートアップが世界各地から優秀な人材を集めやすくすることが柱。EU加盟国のうちハンガリー、ブルガリア、クロアチアを除く24カ国と域外のアイスランドが支持しており、各国は今後、共通ルールに沿って国内法を整備する。

域内のテクノロジー企業の創業者たちは以前から、欧州が多くの巨大デジタル企業を生み出している米国や中国に追いつくための改革を求めてきた。SNSは「欧州では革新的な中小企業に急成長し、最終的に欧州のデジタル主権と戦略的自律性に貢献する大規模経営の成功企業へとスケールアップするスタートアップを増やしていく必要がある。そのためEU各地に拠点を置くスタートアップがライフサイクルのあらゆる段階で成長するための、有利で公正な条件を整えることが急務だ」と指摘している。

改革の目玉はスタートアップが従業員に付与するストックオプションに関するルールの変更。具体的には従業員がストックオプションの権利を行使して持ち株が現金化されるまで、キャピタルゲイン課税の対象とならないほか、スタートアップは議決権のない株式を対象にストックオプションを発行できるようになる。

このほか優れた人材の確保をサポートするためビザの発給を迅速化することや、新会社の設立手続きを簡素化して1日で済むようにすると共に、費用も100ユーロ(約1万3,000円)以下に抑えることなどが盛り込まれている。

欧州に拠点を置くスタートアップの経営者やベンチャーキャピタリストの多くは今回の動きを歓迎している。人事ソフトウェアの開発を手がけるドイツ発のユニコーン企業ペルソニオの創業者で最高経営責任者(CEO)のハノ・レンナー氏は「欧州には効果的なスタートアップ支援策、とりわけ従業員の所有権を管理する政策が必要で、世界各地から最高レベルの人材を集めることができるようにしなければならない」とコメントした。

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