北アイルランド問題で英の回答期限を1カ月延長、治安安定を優先

欧州委員会は16日、英政府が北アイルランドに本土から入る食品などの通関・検疫規制の猶予期間を6カ月延長したことについて、離脱協定に違反するとしてEUが法的手続きに入った問題で、英国の回答期限を1カ月延ばすことで双方が合意したと発表した。欧州委は3月15日に英側に対して法的手続きの正式な通知書を送付し、1カ月以内に回答するよう求めていた。英国が期限までに回答しない場合、欧州委はEU司法裁判所に提訴する方針を示していたが、北アイルランドでは4月に入り各地で暴動が起きており、EUと英国は同地域での治安の安定を優先した。

欧州委のシェフチョビッチ副委員長と英国で対EU交渉を担うフロスト内閣府担当相が15日夜にブリュッセルで会談し、回答期限を延長して協議を継続することで一致した。

EUと英国が締結した離脱協定には、北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づいて「北アイルランド議定書」が盛り込まれ、英国が離脱してからも北アイルランドと地続きで国境を接するEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境は設けず、物流やヒトの往来が滞らないようにすることが決まった。これによって北アイルランドは事実上、EU単一市場と関税同盟に残るため、英本土から北アイルランドに流入する物品については国内の移動であるにもかかわらず通関・検疫が必要となった。

EUと英国は混乱回避のため、3月末までを「猶予期間」としてこうした手続きを緩和することで合意していたが、英国は3月3日、同措置を10月1日まで延長すると発表。これに対してEU側は、一方的な決定で離脱協定に反するとして、法的手続きに入った。

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