英政府がキャメロン元首相を調査、グリーンシル問題での介入疑惑で

英政府は12日、3月に経営破綻した英金融サービス会社グリーンシル・キャピタルに対する調査を開始すると発表した。同社をめぐっては、顧問を務めていたキャメロン元首相が政府関係者に公的支援を働きかけていたことが明らかになり、政界に波紋が広がっている。政府は独立委員会を設け、グリーンシルの経営実態やキャメロン氏によるロビー活動について調査を進める。

グリーンシルは企業間取引で生じる売掛債権を電子記録債権化して支払いを代行する「サプライチェーンファイナンス(SCF)」を手掛け、金融と最先端のIT技術を融合したフィンテックの分野で注目されていた。しかし、金融大手クレディ・スイス・グループが3月初め、資産価値の評価に懸念があり、投資家保護の必要性が生じたとして、同社に投資するファンドを凍結。スイス資産運用・管理大手GAMインベストメントも追随して資金繰りに行き詰まり、経営破綻した。

首相官邸の報道官は記者団に対し「グリーンシルの問題は大きな関心を集めており、ジョンソン首相は政府の活動について完全な透明性を確保するため調査を指示した」と説明。調査ではキャメロン氏のロビー活動や、それを受けた政府側の対応などが焦点になるとつけ加えた。大手法律事務所スローター・アンド・メイのパートナー、ナイジェル・ボードマン氏率いる特別委員会は5月末までにジョンソン氏に調査結果を報告する。

キャメロン氏は16年7月に首相を辞任して政界引退後、18年8月にグリーンシルの顧問に就任した。財務省が今月8日に公表した文書によると、キャメロン氏は昨年4月、新型コロナウイルス感染拡大で苦境に立つ企業への支援策として導入された公的融資制度のうち、イングランド銀行(英中銀)がコマーシャルペーパー(CP)買い入れて流動性を供給する大企業向け緊急融資「COVIDコーポレート・ファイナンシング・ファシリティー(CCFF)」をグリーンシルが利用できるよう、スナク財務相などに働きかけた。

スナク氏はキャメロン氏に宛てた4月23日付のテキストメッセージで「中銀と代替案を検討するようチームに促した」と返信。基準を満たさないとしてCP買い入れは却下されたが、その後、中小企業を対象とした政府保証付き融資スキームの窓口として認定され、鉄鋼・エネルギー大手GFGアライアンスの関連企業に数億ポンドの融資を行った。

キャメロン氏は11日、グリーンシルの破綻後初めてコメントを出し「(コロナ禍で)英経済が危機的な状況に陥り、誰もが事業資金を確保するための有効な手段を模索する中、企業向け融資に関わる金融サービス会社の顧問として政府関係者に支援を働きかけることは適切だと考えていた」と強調。そのうえで、閣僚などとのやりとりは「誤解の余地がないよう、最も公式なルートに限定して行うべきだった」と釈明した。

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