EUの欧州医薬品庁(EMA)は20日、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の新型コロナウイルスワクチンを接種した人の血栓発生が報告されている問題について、同ワクチンと血栓に「因果関係の可能性がある」とする調査結果を発表した。ただ、「非常にまれな副反応」で、接種による利点がリスクを上回るとして、域内での接種を認める方針を示した。
EUは3月3日にJ&J製ワクチンの使用を承認し、J&Jは4月12日に域内への出荷を開始した。しかし、米国で接種後に血栓が発生する事例が確認されたことから、米疾病対策センター(CDC)と米食品医薬品局(FDA)が13日、国内での接種を一時中断することを勧告。これを受けてJ&JはEUへの供給を停止していた。
EMAは米国の8件の血栓発生事例について調査した上で、血小板の減少に伴う血栓が非常にまれな副作用として生じる可能性があるという警告を製品情報に記載するべきとの結論を下したが、EU内での接種を推奨する方針は変えなかった。同決定を受けて、J&Jは同日、EUへの出荷を再開すると発表した。
EMAは7日、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナワクチンに同様の副反応が生じる可能性があるとしながらも、製品情報での警告を条件に接種継続を推奨していた。J&Jについても同じ対応をとった形となる。
EUはJ&Jから最大4億回分のワクチンを調達することになっている。年内は2億回分の供給を受ける予定だ。加盟国の間ではアストラゼネカのワクチンと同じく、接種を見合わせる動きが広がっており、EMAの判断に沿って接種を進めるかどうかは不透明だが、ドイツ保健省は21日、同日にワクチン接種を開始すると発表した。フランスは24日から55歳以上の人への接種を開始した。オランダは今週から接種を開始する予定。デンマーク政府は次週に接種開始の可否を判断する意向を表明した。