英領北アイルランド自治政府のフォスター首相は4月28日、6月末に辞任すると表明した。親英国派の地域政党・民主統一党(DUP)の党首も5月28日付で退く。英国のEU離脱への対応などをめぐり、党内でフォスター氏に対する批判が強まっていた。
フォスター氏は声明で、「自治政府首相として北アイルランド市民に奉仕できたことは人生の特権」などと述べたうえで、親英国派と親アイルランド派の間で対立が深まっている現状に懸念を表明。辞任の理由は明らかにしなかった。英本土への帰属意識が強いDUP内で穏健派とされるフォスター氏の辞任により、各地で暴動が起きている北アイルランドの治安がさらに不安定になる恐れもある。
EUと英国が締結した離脱協定には、北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づいて「北アイルランド議定書」が盛り込まれ、英国が離脱してからも北アイルランドと地続きで国境を接するEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境は設けず、物流やヒトの往来が滞らないようにすることが決まった。これによって北アイルランドは事実上、EU単一市場と関税同盟に残るため、英本土から北アイルランドに流入する物品については国内の移動であるにもかかわらず通関・検疫が必要となった。
こうした中、北アイルランドでは3月下旬から親英国派によるものとみられる暴動が各地で相次いでいる。DUP内では英国のEU離脱をめぐるフォスター氏の対応を批判する声が高まっており、地元メディアによると、北アイルランド議会のDUP議員の過半数が同氏に対する信任投票を求める書簡に署名していた。