欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

総合 – 欧州経済ニュース

トルコが言論の自由など抑圧、欧州委が年次報告書で批判

この記事の要約

欧州委員会は8日発表したEU拡大に関する年次報告書で、最大の懸案となっているトルコについて、司法の独立、言論の自由を脅かす動きが相次いでいることに懸念を示し、同国はEU加盟に向けて、これらの問題を改善する必要があると指摘 […]

欧州委員会は8日発表したEU拡大に関する年次報告書で、最大の懸案となっているトルコについて、司法の独立、言論の自由を脅かす動きが相次いでいることに懸念を示し、同国はEU加盟に向けて、これらの問題を改善する必要があると指摘した。

トルコとEUの加盟交渉は2005年に開始された。しかし、トルコがEU加盟国であるキプロス(ギリシャ系の南キプロス)の国家承認を拒否していることや、イスラム国である同国の加盟にドイツ、フランスが冷ややかなことが障害となって、交渉は停滞している。35に上る交渉項目のうち、交渉開始にこぎ着けたのは14項目、完了したのは1項目だけという状態だ。

欧州委は今回の報告書で、2013年末に当時のエルドアン首相(現大統領)の汚職疑惑が浮上してから、裁判官、判事が大幅に入れ替えられたことや、政府がインターネット規制を強化し、動画投稿サイト「ユーチューブ」、ソーシャルメディア「ツイッター」を遮断したことなどを問題視。司法の独立と表現の自由の抑圧を「深刻に懸念している」として、政府に対応を促した。

ただ、欧州委はこうした問題があるからこそ、加盟交渉を通じて改善を促すことが重要として、新たに「法的・基本的権利」「司法・自由・安全」の2項目での交渉開始に応じる用意があることを明らかにした。

欧州委がトルコのEU加盟に向けた改革の取り組みを批判しながらも、加盟交渉の進展を打ち出した背景には、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」への対応で、地政学的に重要な立場にある同国の協力を取り付けたいという思惑もあるもようだ。