欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

EUその他

英の原発新設、欧州委が最終承認

この記事の要約

欧州委員会は8日、仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)が英政府の支援を受けてイングランド南西部のヒンクリー・ポイントに原子力発電所を新設する事業を最終承認したと発表した。欧州委は公的支援が過剰として難色を示していたが […]

欧州委員会は8日、仏電力最大手のフランス電力公社(EDF)が英政府の支援を受けてイングランド南西部のヒンクリー・ポイントに原子力発電所を新設する事業を最終承認したと発表した。欧州委は公的支援が過剰として難色を示していたが、英政府が支援計画を修正したことから問題は解消したと判断した。これによって同原発建設が始動する運びとなった。

EDFは2013年10月、仏原子力会社アレバ、中国の広核集団(CGN)、中国核工業集団(CNNC)と共同で総額160億ポンド(約203億ユーロ)を投じて、ヒンクリー・ポイントに原発を建設すると発表。既存の原発を含む多くの発電所で耐用期限が迫っており、新たな電力供給源の確保が急務となっている英政府は、同計画を支援するため、同原発に35年間にわたって電力固定価格買い取り制度(FIT)を適用し、取り決めた価格が電力卸売市場の価格を下回った場合に政府が差額を補填するほか、建設に必要な融資に政府が信用を供与する方針を打ち出していた。固定買い取り価格は1メガワット時当たり92.5ポンドで、現在の英国の電力卸売価格の2倍に相当する。

欧州委は政府の手厚い支援計画がEUの公的支援に関するルールに抵触する恐れがあるとして、昨年12月に調査を開始していた。これに対して、英政府は信用保証料の大幅引き上げによって支援額を10億ポンド圧縮することや、同原発の利益が一定水準に達した場合に一部を政府に還元するという是正案を提示。これを欧州委は受け入れ、認可に踏み切った。

ヒンクリー・ポイント原発の出力は1,650メガワットで、英国の電力需要の約7%を賄う能力を持つ。2023年の稼働を予定している。プロジェクトの出資比率はEDFが45~50%、アレバが10%、CGNとCNNCが合わせて30~40%。英国での原発新設は1995年以来約20年ぶりで、福島第1原発の事故後に欧州で建設される初の原発となる。

同プロジェクトをめぐっては、欧州の脱原発の流れに逆行するとして、環境保護団体やオーストリアなど一部の加盟国が反対している。しかし、欧州委は原発推進の是非は各国の判断に委ねられるとして、EUの公的支援ルールとの整合性に絞って審査を行った。反対派は欧州委の決定に反発しており、オーストリア政府は欧州司法裁判所への提訴も辞さない構えを示している。