米国と英仏など欧州5カ国は21日、国境を越えて事業展開する巨大IT企業に対するデジタル課税を巡る紛争で、移行期間について合意したと発表した。欧州各国は国際的に合意した課税ルールの条約が発効するまでに、独自に導入しているデジタル課税を廃止する一方、米国は5カ国に対する制裁関税の発動を取り下げる。
経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とする136カ国・地域は今月8日、多国籍企業の税逃れを防ぐ新たな国際課税ルールとして、法人税の最低税率を世界共通で15%とするほか、デジタル課税の導入で最終合意した。各国・地域は国内法の改正や条約締結などの手続きを進め、2023年中の制度開始を目指しているが、欧州主要国ではすでに独自のデジタルサービス税を導入しており、「移行期間」の扱いで米欧が対立していた。
米英仏とイタリア、スペイン、オーストリアが発表した共同声明によると、欧州各国はデジタル課税に関する国際条約が発効するまで独自課税を維持できるが、22年1月以降の納税額が国際ルールに基づく課税額を上回った場合、超過分を将来の納税額から控除できるようにする。一方、米国は欧州各国に対する制裁関税の発動を取り下げる。課税対象となる巨大IT企業を抱える米国はOECDの主導で最終合意にこぎつけたことを受け、制裁をちらつかせて欧州側に独自課税の即時撤廃を求めていた。
なお、米国は欧州5カ国と同様、独自のデジタル課税を導入しているトルコとインドに対しても制裁関税の発動を検討しているが、両国は今回の合意に含まれていない。