ECBが金融緩和策を維持、早期の利上げを否定

欧州中央銀行(ECB)は10月28日に開いた定例政策理事会で、コロナ禍を受けて実施している金融緩和策の維持を決めた。ユーロ圏では景気が回復し、物価が急上昇しているが、インフレ高進は一時的とする見方を変えず、早期の利上げを否定。大規模な金融緩和による景気の下支えを優先する姿勢を堅持した。

理事会では量的金融緩和策の柱となっている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置について、購入ペースを4~6月期、7~9月期より緩やかにしながらも継続することを決定。主要政策金利も据え置いた。

ユーロ圏の9月のインフレ率は13年ぶりの高水準となる前年同月比3.4%に拡大。ECBが目標とする2.0%を大きく上回った。エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱などが物価を押し上げ、ECBの目標を超える状況が7月から続いている。29日に発表された10月のインフレ率は4.1%だった。(後続記事参照)

同様の状態にある世界の他の中銀では、金融政策の正常化に乗り出す動きが活発化しており、27日にはカナダ中銀が量的金融緩和を打ち切り、2022年4月にも利上げに踏み切る意向を表明した。

しかし、ECBのラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏の物価急上昇はエネルギー高騰、サプライチェーンの混乱、ドイツの付加価値税(VAT)引き上げという一時的要因によるもので、22年には縮小に転じるとする従来の見方を維持。政策金利の引き上げに関しては、インフレ率が2.0%に達し、さらに当面は同水準を維持すると判断するまで現行水準かそれ以下にとどめるとする既定方針の条件を満たしていないとして、早期の利上げを否定した。

さらに、金融正常化に動いているのは、かなり前からインフレ率が目標水準を超え、景気回復は早いペースで進んでいる国の中銀で、ユーロ圏とは状況が違うとして、緩和策維持の妥当性を強調した。

ただ、ラガルド総裁は物価の急上昇が当初の予測より長期化する可能性があることを認め、インフレ高進への警戒感もにじませ、PEPPを予定通り22年3月で打ち切る方針を打ち出した。12月16日に開く理事会で正式決定する見込みだ。

一方、ECBは景気回復を引き続き後押しする必要があるとして、急激な緩和策縮小には慎重で、12月の理事会ではコロナ禍前から実施している資産購入プログラム(APP)の拡充などが検討されると目されている。

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