米投資会社ファンドがシェルに分割要求、脱炭素で企業価値向上

米投資ファンドのサード・ポイントが英・オランダ系石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルの株式を大量に取得し、業績と企業価値の向上を目的に会社分割を求めていることが明らかになった。欧米メディアが10月27日に報じた。気候変動問題への対応が注目される中、物言う株主(アクティビスト)が事業戦略の抜本的な見直しを提言した格好だ。

サード・ポイントは保有するシェル株の規模を明らかにしていないが、ロイター通信などは事情に詳しい関係者の話として7億5,000万ドル相当と報じている。同社は投資家に宛てた27日付の書簡で、再生可能エネルギーや液化天然ガス(LNG)などの事業を切り離し、別会社として運営することを提案した。巨額投資が必要な低炭素事業部門と、石油・ガス生産など従来型の化石燃料事業部門を分離することで、それぞれの戦略に一貫性を持たせ、多様な投資家の期待に応えて企業価値を高めることができると訴えている。

これに対し、シェルのベン・ファンブールデン最高経営責任者(CEO)は28日の決算発表の席上、「われわれの戦略は首尾一貫している。低炭素エネルギーへの転換を実現するための長期戦略は大多数の投資家に支持されている」と述べ、会社分割に否定的な見解を示した。

主要エネルギー企業は化石燃料への依存度を低減し、再生可能エネルギーなど低炭素分野に軸足を移す動きを加速させている。シェルは20年4月、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとの目標を発表したが、今年2月には原材料の調達や物流、顧客によるエネルギー使用や製品の廃棄などを含め、サプライチェーン全体で同年までに気候中立を実現すると目標を厳格化。石油の生産量を30年にかけて年1~2%のペースで減らす一方、風力や太陽光など再生可能エネルギーの比重を高め、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)事業などを推進する方針を打ち出した。

しかし、オランダ・ハーグの地方裁判所は5月、シェルの温室効果ガス削減に向けた取り組みが不十分だとして、同社に対し30年までにCO2排出量を19年比で45%削減するよう命じる判決を言い渡した。企業に具体的なCO2削減目標を示した判決は極めて異例。シェルはこれを受け、今回新たに石油・ガス生産など自社からの温室効果ガス排出量を「30年までに16年比で50%削減する」との中間目標を設定した。

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