EUがネット上の政治広告を規制、資金源などの情報開示義務付けへ

欧州委員会は25日、インターネット上の政治広告に対する規制案を発表した。大手IT企業などに広告の目的や手法、資金源に関する情報開示を義務付けるほか、ターゲティング広告で機微な個人情報の利用を禁止する内容。ロシアや中国を念頭に、政治広告の透明性を高めて選挙介入や世論操作を阻止する狙いがある。EU加盟国と欧州議会の承認を経て、次期欧州議会選挙の1年前にあたる2023年春までの新ルール導入を目指す。

新たな規制の対象となるのは米メタ(旧フェイスブック)やグーグルをはじめとするIT大手やメディア、広告会社など。政治広告であることがひと目でわかるようラベルを表示し、広告の趣旨やスポンサー、広告料金としていくら支払われたかなどを明示するよう義務付ける。また、ユーザーの興味・関心などに応じて広告を配信するターゲティング広告に関して、対象を絞り込んだり、より多くの人にリーチするための手法について情報開示を求めるほか、人種や政治信条、宗教、性的指向といった機微(センシティブ)情報の利用を禁止する。違反した場合は各国のデータ保護当局が制裁金を科す。

欧州委のヨウロバー副委員長(価値・透明性担当)は声明で「選挙で不透明な手法による競争があってはならない。人々は自分がなぜ広告を見ているのか、誰がスポンサーでいくら支払ったのか、どのようなターゲティングの基準が用いられたのかを知る必要がある。新たなテクノロジーは(人々を)操作するのではなく、開放するためのツールであるべきだ。今回示した野心的な提案は、政治キャンペーンに前例のないレベルの透明性をもたらすものだ」と強調した。

ロシアや中国は近年、ネットを利用して欧米諸国の選挙に介入したり、世論操作を行っているとされる。両国は関与を否定しているが、米ツイッターは19年11月から政治広告の掲載を全世界で禁止するなど、企業側も自主的に取り組みを進めている。欧州委の発表を受け、グーグルは公式ブログで「政治広告の透明性確保を目的とする欧州委の提案を支持する」と表明。メタは「当社は長い間、政治広告に関するEU全体での規制を求めてきた。欧州委の提案は、特に国境をまたぐ政治広告の問題に対処するものであり、EUの取り組みを歓迎する」とコメントした。

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