欧州委員会は25日、EU域内の資本市場を統合して単一市場を実現する「資本市場同盟」の構築に向けた政策パッケージを発表した。欧州委が2020年9月に提示した「資本市場同盟に関する新たな行動計画」をもとに、EU加盟国が優先課題として21年末までに具体策を検討するよう欧州委に求めていたもので、投資家が域内の企業の財務情報などをすぐに入手できるようにするための「欧州単一アクセスポイント(ESAP)」の整備などを柱とする内容。今後、欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。
政策パッケージは資本の自由移動に焦点をあてた4つの法案と、欧州委が22年以降に取り組む優先課題をまとめた政策文書で構成されている。このうちESAPの整備に関する規則案は、16項目の行動計画の中で、域内の企業が資金調達しやすくするための第1の施策と位置付けられている。企業の財務情報や持続可能性に関連した情報にアクセスできるEU共通のプラットフォームを構築することで、企業の認知度を高めて投資家の目に留まりやすくし、資金調達の機会を増やすのが狙い。規則案によると、欧州証券市場監督局(ESMA)が各国当局に提出された情報を一元管理するシステムを構築・運用する。
政策パッケージのもう1つの柱は、金融・資本市場の透明性向上と投資家保護を目的とする金融商品市場規則(MiFIR)の改正。欧州委は域内のすべての取引所における株式や債券、デリバティブなどの取引データを集約した「欧州統合テープ」と呼ばれるシステムを構築し、投資家がほぼリアルタイムでこれらの情報にアクセスできるようにすることを提案した。これにより取引市場間の競争が促進され、国際競争力の強化にもつながると説明している。
欧州委はこのほか、欧州長期投資ファンド(ELTIFs)規則とオルタナティブ投資ファンド運用者指令(AIFMD)の見直しを提案した。ELTIFsの見直しは、強力な投資家保護を実現しながら、長期投資の魅力を高めて企業の補完的な資金調達源としての役割を強化するのが狙い。具体的には最低1万ユーロの投資基準を撤廃して個人投資家がELTIFに投資しやすくし、EUが推進するグリーン化やデジタル化に必要な資金を調達しやすくする。主にヘッジファンドなどの運用者を対象とするAIFMDの見直しでは、委任に関するルールをより明確にし、高い水準で投資家の利益が保護される仕組みを整備する。
一方、欧州委は22年以降に取り組む課題として、中小企業が公開市場で資金調達しやすくするための上場規則の見直し、金融リテラシーの向上に向けた枠組みの整備、破産手続きの予見可能性を高めるための加盟国間の法制度の調和などを挙げている。