EU加盟国がVAT制度改正案で合意、気候変動対策などとの整合性確保

EU加盟国は7日開いた財務相理事会で、付加価値税(VAT)制度の改正案の内容で合意した。新ルールの導入により、加盟国はより柔軟にVATの税率を設定できるようになる。また、気候変動対策やデジタル化への対応、公衆衛生の向上といったEU共通の優先課題に沿って、幅広い商品やサービスに軽減税率やゼロ税率を適用したり、逆に減免措置を廃止することが可能になる。欧州議会の承認を経て、2022年3月までの新ルール導入を目指す。

現行のVAT指令は標準税率を15%以上と定め、加盟国に軽減税率(5%以上)と、特例としてゼロ税率を含む超軽減税率の設定を認めているが、適用できる品目が細かく規定されている。改正案によると、加盟国は加重平均したVAT税率が12%以上になることを条件に、標準税率(15%以上)以外に2種類の軽減税率(5%以上)、ゼロ税率、超軽減税率(0~5%の間)と、合わせて4種類の軽減税率を設定し、幅広い品目に適用できるようになる。

一方、EU共通の優先課題とVAT制度の整合性を確保するため、欧州委はすべての加盟国が軽減税率を適用できる商品・サービスのリスト(VAT指令の附属書III)を更新する。新たにリストに追加される品目には、環境や気候変動対策に役立つもの(例えば自転車やソーラーパネルなど)、デジタル移行をサポートするもの(ブロードバンドサービスや、文化・スポーツイベントのライブ配信サービスなど)、公衆衛生の向上につながるもの(マスクや防護服など)が含まれる。

逆に環境や気候変動対策に悪影響を及ぼすと考えられる商品やサービスに関しては、2030年までに軽減税率やゼロ税率の適用を段階的に廃止する。

加盟国は今後数年にわたり、新型コロナウイルス危機からの回復に向けた取り組みを進めながら、グリーン化とデジタル移行を推進するために多額の投資を行う必要がある。こうした状況では税収を確保することが極めて重要であり、そのため改正案では加盟国が軽減税率を適用できる品目数の上限を定め、附属書IIIに明記した。

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