欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/12/20

EU情報

欧州議会が「デジタル市場法」修正案可決、IT大手に対する規制強化

この記事の要約

欧州議会は15日の本会議で、デジタル市場で支配的な立場にある巨大IT企業に対する新たな規制案「デジタル市場法(DMA)」の修正案を賛成多数で可決した。欧州委員会が提示した原案に対し、規制対象となる事業者の範囲を拡大する一 […]

欧州議会は15日の本会議で、デジタル市場で支配的な立場にある巨大IT企業に対する新たな規制案「デジタル市場法(DMA)」の修正案を賛成多数で可決した。欧州委員会が提示した原案に対し、規制対象となる事業者の範囲を拡大する一方、事業規模の基準を引き上げるなどの変更を加えた内容となっている。新ルールの早期導入に向け、2022年前半に欧州議会とEU加盟国の代表が交渉に入る。

新規制はプラットフォーマーと呼ばれるIT大手に対し、他社のサービスを排除したり、自社サイトで自社の製品やサービスを優遇するなどの行為を禁止し、公正な競争環境を確保するのが狙い。「GAFA」と呼ばれる米4社を念頭に、EU域内で検索エンジンや交流サイト(SNS)、動画共有サイト、クラウドサービスなどの「コア・プラットフォーム」サービスを展開する事業者のうち、域内のサービス利用者が月間4,500万人以上で、かつ法人ユーザーが年間1万社を超えるなど、一定の基準を満たした事業者を「ゲートキーパー」に指定。自社の製品やサービスを検索結果で上位に表示したり、自社サイトを利用する競合他社のデータを使って自社サービスが有利になるようにするなど、反競争的な行為を禁止する内容となっている。

修正案によると、新たにウェブブラウザやバーチャルアシスタント、コネクテッドテレビなどのサービスが規制対象に加わる。ゲートキーパーの認定基準のうち事業規模に関しては、欧州委の原案では「3つ以上のEU加盟国でサービスを提供し、欧州経済領域(EEA)での過去3年間の年間売上高が65億ユーロ以上で、株式時価総額が650億ユーロを超える企業」となっていたが、修正案では年間売上高が80億ユーロ以上、株式時価総額が800億ユーロ以上に引き上げられた。

また、原案では違反企業に対し、欧州委は年間売上高の「10%を上限に」制裁金を科すことができるとなっていたが、修正案では「4%以上20%未満」と幅を持たせている。

さらにプラットフォーマーによる寡占化が進むのを防ぐため、ゲートキーパーはいかなる買収計画も欧州委に報告しなければならず、欧州委は潜在的な競争の脅威をつぶす目的で新興企業を買収する「キラー買収」を阻止することができる。