欧州証券市場監督機構(ESMA)は17日、EU域内の銀行や資産運用会社が引き続き英国に拠点を置く中央清算機関(CCP)利用してデリバティブ取引を行うことができるようにすべきだとの見解を示した。英国の2大清算機関であるロンドン証券取引所(LSE)グループのLCHとロンドンのICEクリア・ヨーロッパは、EU金融市場の安定にとって「システム上重要」であり、既存のルールでは十分にカバーできない恐れがあるものの、EU域内の顧客が英国の清算機関を利用できなくなった場合、デリバティブ取引の決済処理に混乱が生じ、EUにとって「現時点ではリスクがメリットを上回る」と結論づけた。
欧州ではLCHがユーロ建てデリバティブ取引の中央清算機関として圧倒的なシェアを握っている。一方、ICEクリア・ヨーロッパはクレジットデフォルトスワップとEUの短期金利の大部分を扱っている。
EUは英国の離脱により、同国のCCPがEU規制の対象外となり、域内の銀行などがデリバティブ取引の決済を英に過度に依存するのはリスクがあると判断。同取引の清算を域内の機関に一元化することを決めた。ただ、デリバティブ市場が混乱する事態を防ぐため、欧州委は昨年6月、22年6月末までは英のCCPがEU市場にアクセスすることを認めると発表。さらに先月、期限までにEU側の移行準備が間に合わない恐れがあるとして、7月以降も業務の継続を認める意向を表明していた。
ESMAはLCHやICEクリア・ヨーロッパが担ってきた業務を域内の清算機関が引き継ぐには、EU側の能力拡充に加え、英機関に対する「「EUのエクスポージャーを減らすための適切なインセンティブ」を検討する必要があると指摘。これには清算参加者や顧客のための代替清算に関する取り決めや、資本要件の厳格化などが含まれる可能性がある。
ESMAはさらに、イングランド銀行との協力関係を強化し、英国の清算機関が破綻した場合に介入する権限を与えたい考えを示した。