欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/27

総合 – 欧州経済ニュース

EUがエボラ対策支援額を10億ユーロに倍増、「調整官」も任命

この記事の要約

EUは23、24日に開いた首脳会議で、エボラ出血熱対策への資金支援を加盟国全体で10億ユーロに拡大することで合意した。加盟国はこれまでにエボラ対策費として約6億ユーロを拠出することで合意していたが、流行に歯止めがかからな […]

EUは23、24日に開いた首脳会議で、エボラ出血熱対策への資金支援を加盟国全体で10億ユーロに拡大することで合意した。加盟国はこれまでにエボラ対策費として約6億ユーロを拠出することで合意していたが、流行に歯止めがかからないため、支援規模を大幅に拡大して被害が深刻化している西アフリカ諸国での緊急医療や検査体制の拡充を図る。

首脳会議ではEUにエボラ熱への対応で各国や国際機関との連携にあたる「調整官」を新設し、11月に発足する欧州委員会の新体制で人道支援・危機管理担当委員に就任するキプロス出身のクリストス・スティリアニデス氏を充てることも決めた。

EUは声明で「エボラ熱の感染規模は被害が出ている国の経済と安定を脅かすだけでなく、地域全体にとって大きな脅威だ」と指摘。さらに感染が拡大すれば欧州にも深刻な影響が及ぶ可能性があるとして、エボラ危機に対処するため早急にあらゆる措置を講じる必要があると判断した。これまでは英国やフランスなどの旧宗主国による個別の支援が中心だったが、今後はEUと加盟国が緊密に連携して感染拡大防止策を拡充する。具体的には被害が拡大しているリベリア、シエラレオネ、ギニアを中心に診察施設を増設したり、救援活動のため欧州各国から西アフリカに派遣されている医療従事者などが現地で感染したり、関係者を退避させる場合に備えた搬送体制の整備を急ぐ。

一方、欧州委員会は23日、エボラ出血熱のワクチン、治療薬、予防薬の開発および臨床試験のためにEU予算から2,440万ユーロを拠出すると発表した。中心となるのは未承認ワクチンの大規模な臨床試験になる見通し。製薬会社の業界団体と連携してプロジェクトを推進し、ワクチンの早期実用化を目指す。欧州委のバローゾ委員長は「われわれは時間との闘いの中で緊急事態に対応しながら、同時に長期的な対策も講じなければならない。それには最も有望なワクチンや治療薬の開発のための研究を加速させる必要がある」と強調している。