欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/27

EU産業・貿易

EUと中国が通信機器めぐる紛争で和解、欧州委が調査実施を取りやめ

この記事の要約

欧州委員会は20日、中国製の通信機器をめぐる通商紛争で、中国政府と和解したと正式発表した。欧州委は中国2社が携帯電話サービス向けの通信機器で、政府から不当な補助金を受け、EUにダンピング輸出している疑いがあるとして調査に […]

欧州委員会は20日、中国製の通信機器をめぐる通商紛争で、中国政府と和解したと正式発表した。欧州委は中国2社が携帯電話サービス向けの通信機器で、政府から不当な補助金を受け、EUにダンピング輸出している疑いがあるとして調査に乗り出す構えを示していたが、中国側と同問題の解決に向けた枠組みで合意したことから、調査を開始することなく矛を収める。

欧州委は2012年5月、中国の華為技術、中興通訊(ZTE)が携帯電話向け通信機器を政府の補助金を後ろ盾にして不当な廉価でEU市場に輸出している疑いがあるとして、反ダンピングおよび反補助金調査の開始を検討していると発表。ただし、当時は中国製太陽光パネルのダンピング問題などに関する同国との通商紛争が激化していたことから、正式な調査開始は見送ってきた。

紛争解決の契機となったのは、双方が12年7月に太陽光パネルをめぐる紛争で和解し、中国が報復措置として実施していたEUのワイン、太陽光パネル向け多結晶シリコンに対する反ダンピング、反補助金調査を今年3月に中止するなど雪解けムードが広がったこと。欧州委は3月、華為技術と中興通訊への反ダンピング調査を行わないことを決定していた。

欧州委と中国政府は同紛争の最終解決に向けて18日に行った協議で、◇中国政府による国内企業への輸出信用供与を制限するための協議開始◇双方の通信機器市場における相手側の企業のシェアを監視する独立機関の設置◇中国の次世代通信技術の基準設定に際して、EU企業の関与を認める◇中国が通信関連の研究開発(R&D)プロジェクトでEU企業を差別しない――ことなどで合意。これを受けて欧州委は、反補助金調査の実施も取りやめ、正式に和解した。

今回の和解によって、一時は過熱していたEUと中国の通商紛争は沈静化し、大きな懸案はなくなったことになる。