欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/27

EU産業・貿易

銀行破綻処理基金の拠出ルール提案、小規模銀行の負担は軽減=欧州委

この記事の要約

欧州委員会は21日、EU内の銀行の破綻処理を一元化する制度の柱となる「単一破綻処理基金(SRF)」について、銀行の拠出に関するルールを提案した。銀行の規模、抱えるリスクに応じて拠出額を決めるという内容で、大手銀行に大部分 […]

欧州委員会は21日、EU内の銀行の破綻処理を一元化する制度の柱となる「単一破綻処理基金(SRF)」について、銀行の拠出に関するルールを提案した。銀行の規模、抱えるリスクに応じて拠出額を決めるという内容で、大手銀行に大部分を拠出させる。中小銀行に関しては特別に配慮し、負担を軽減する。

「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる破綻処理の一元化制度は、EU銀行同盟創設構想の第2段階。経営危機に陥った域内銀行の破綻処理を公的資金に頼らず迅速、公正に進める狙いがある。銀行同盟の第1段階である銀行監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度に加わる国の銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた際に「破綻処理委員会」が対応策を協議し、救済して再建するか閉鎖するかを決め、銀行の拠出によって創設されるSRFを使って処理を進めるという仕組みだ。

SRFは各国の銀行による拠出を積み立てて運用される。対象銀行の保証付き預金の総額の少なくとも1%に相当する550億ユーロ規模とすることを目標としている。欧州委が今回まとめた提案は、各銀行の毎年の拠出額の算定方法を定めたもの。

これによると、大手銀行の拠出額は各行の資産規模と抱えるリスクの度合いに応じて決め、上限は設けない。リスクが大きい銀行ほど負担が増える。これに対して小規模銀行については、同様の原則が適用されるものの、一般的にリスクが小さいことから、大手銀行を大きく下回る水準の固定額を拠出される。具体的には、負債額が3億ユーロ以下で、総資産が10億ユーロを超えない銀行を小規模銀行と認定し、6分類に分ける。年間拠出額は最低1,000ユーロ(負債が5,000万ユーロ以下の場合)、最高5万ユーロ(同3億ユーロ以下の場合)となる。ただし、特別なリスク要因を抱えている場合は例外とし、大手銀行と同様に扱う。

EU域外の国の銀行が銀行同盟に加わる加盟国で展開する支店も拠出を求められるが、欧州委は域内銀行と同等に扱うのは適切ではないとして、改めて定めるルールに従って特例的な措置を適用する方針だ。

欧州委の試算では、同手法によって拠出総額に占める大手銀行の負担の割合は約90%に達する一方で、小規模銀行は0.3%程度にとどまるという。この提案は加盟国、欧州議会の承認が必要。欧州委は年内の正式決定を見込んでいる。

 同ルールをめぐっては、フランス、オランダなどが全銀行による均等負担を主張していた一方で、国内に「シュパルカッセ」と呼ばれる中小規模の貯蓄銀行が多く存在するドイツ政府が中小銀行の負担軽減を求めていた。欧州委の提案はドイツの意向に配慮した格好となる。

破綻処理基金は各国が自国銀行向けに創設した基金を土台に、2015年1月1日に運用を開始。16年1月からSRFとして運用されるが、各国ベースの基金を段階的に統合するため、基金の完全共通化は8年後となる。