EU加盟国は5日に開いた財務相理事会で、域内で活動する多国籍企業に世界共通の最低法人税率を適用するための指令案について協議したが、ポーランドが拒否権を発動し、合意に至らなかった。EUでは税務に関する政策決定は全加盟国の同意が必要で、調整の難航が予想される。
欧州委員会は2021年12月、EU域内で活動する多国籍企業に対し、世界共通の最低法人税率を適用するための指令案を発表した。経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とする137カ国・地域が21年10月に合意した新たな国際課税ルールに沿ったものだ。
この国際合意は、IT企業を含む巨大多国籍企業に対する課税権の各国への配分に関する第1の柱と、多国籍企業の利益に対する最低実効税率を世界共通で15%に設定する第2の柱からなる。欧州委の指令案は、第2の柱を実施し、全ての多国籍企業グループに対して最低限の法人税負担を確保するための「グローバル税源浸食防止(GloBE)規則」を域内で適用するのに必要なルールを定めたもの。多国籍企業に適用する法人税の最低税率を15%に設定し、事業展開する国・地域で実効税率が15%を下回る場合、域内のグループ企業に「追加税(top-up tax)」を課すことなどを柱とする内容だ。
ポーランドは第1の柱に抜け穴があり、巨大多国籍企業による税逃れを完全に防ぐための法的拘束力があるルールの導入が先決として、指令案に反対している。EUでは同じく難色を示していたスウェーデン、エストニア、マルタが、議長国フランスが3月に提示した妥協案を受け入れ、残るポーランドが同意すれば決着する状況にあった。
今回の財務相理事会では、第1、2の柱をパッケージとして運用することでポーランドの懸念に対応できるとして説得したが、同国が反対姿勢を崩さなかった。5月に開く次回の理事会での合意を目指し、調整を続けることになる。