欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/4/25

EU情報

加盟国と欧州議会、デジタルサービス法案で合意

この記事の要約

EU加盟国と欧州議会は23日、インターネット上で利用者とサービスや商品を仲介する事業者に対し、違法コンテンツの削除などを義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」の最終案で合意した。特に利用者が多く影響力の強い巨大プラッ […]

EU加盟国と欧州議会は23日、インターネット上で利用者とサービスや商品を仲介する事業者に対し、違法コンテンツの削除などを義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」の最終案で合意した。特に利用者が多く影響力の強い巨大プラットフォーム企業に対する規制を強化し、インターネットの安全性や透明性を高めて消費者を保護するとともに、偽情報やプロパガンダなどの拡散防止を含めた厳しい対応を求める。閣僚理事会と欧州議会の承認を経て、2023年の新ルール導入が見込まれる。

デジタルサービス法は2000年に制定された「電子商取引指令」を改正し、EU域内でオンライン仲介サービスを提供する事業者に著作権侵害動画やヘイトスピーチ、児童ポルノといった違法コンテンツや、模造品や海賊版など違法商品の削除を義務付ける内容。具体的には交流サイト(SNS)や検索エンジン、コンテンツ共有サービスなどを提供するオンラインプラットフォームが中心となる。

域内で活動する全ての仲介サービス事業者が規制の対象となり、違法コンテンツの排除とともに、違法性のあるコンテンツを第三者が通報できる仕組みの構築が求められる。また、宗教や人種、性的指向、政治的信条などに基づくターゲティング広告を禁じ、ターゲティング広告を目的とする未成年者からのデータ収集も禁止する。さらにサービスの解約に際し、加入時と同様の簡単な操作で手続きが完了するようにしなければならない。

一方、EUの全人口の10%に相当する月間4,500万人以上の利用者を抱える巨大オンラインプラットフォームに対する規制を強化し、加盟国ではなく、欧州委員会の監督下に置く。米アルファベット傘下のグーグルやメタ(旧フェイスブック)などの米IT大手に加え、ツイッターやオンライン旅行サービスのブッキング・ドットコムなどが対象となる見通しだ。

巨大プラットフォームの運営者は違法コンテンツの流通や、選挙や公衆衛生、治安などに関連した意図的な情報操作に自社のシステムが悪用されるリスクを分析し、緊急時に偽情報やプロパガンダを制限するなどの措置を講じることが義務付けられる。これはロシアによるウクライナ侵攻を受け、民主主義や安全保障に対する危機を想定して設けられた規定だ。さらに、特定ユーザーが興味を持つと思われるコンテンツや商品を提示する「レコメンドシステム」のアルゴリズムを定期的にチェックし、当局の求めに応じて関連する情報を提供する必要がある。

デジタルサービス法に違反した企業には世界全体の売上高の最大6%の制裁金を科す。

欧州委は20年12月、巨大IT企業に対する規制強化策として、消費者保護に重点を置いたデジタルサービス法案とともに、「ゲートキーパー(門番)」と呼ぶ巨大プラットフォームがデジタル市場で影響力を強めるのを防ぎ、公正な競争環境を確保するための「デジタル市場法(DMA)」案を発表した。DMAに関しては、加盟国と欧州議会が3月に最終案で合意している。

欧州委のフォンデアライエン委員長は「スピードと内容の両面で歴史的な合意だ」と歓迎。ベステアー上級副委員長は「デジタルサービス法の導入により、オフラインで違法なものは、オンラインでも違法なものとして取り扱われることになる。単なるスローガンではなく、現実の対応だ」と強調した。