EUは11日、ルクセンブルクで外相理事会を開き、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁について協議した。複数の加盟国からロシア産石油の輸入禁止を求める声が出たものの、代わりとなるエネルギー源の確保が難しい国も多く、合意には至らなかった。ただ、天然ガスと比べて石油はロシアへの依存度が低く、調達先も多様なため、欧州委員会を中心に引き続き禁輸の可能性を探る方針を示している。
EUは8日に発動した対ロ制裁の第5弾に石炭の輸入禁止を盛り込み、初めてエネルギー禁輸に踏み切った。ロシアがウクライナ東部や南部への攻勢を強める中、EU内ではフランスやポーランド、アイルランドなどが石油の禁輸を強く求める一方、ハンガリーなどは反対している。ドイツはショルツ首相がロシア産原油の輸入を「年内に停止できる」との見通しを示すなど、態度を変えつつあるが、ロシアへの依存度が高い中・東欧諸国と同様、即時の禁輸には難色を示している。
ボレル外交安全保障上級代表は会議後の記者会見で、「加盟国によってエネルギー供給の状況が大きく異なる」と指摘。各国ともロシアへの依存度を減らす努力をしているものの、代わりとなる調達先の確保などが困難なケースも多く、合意形成は容易ではないと説明したうえで、「石油やガスの禁輸を含め、何ができるかさらに検討を続ける」と述べた。
こうした中、欧州委は第6弾となる対ロ制裁案の策定作業を進めているもようだ。ロイター通信が20日、EU関係者の話として報じた。
それによると、欧州委は追加制裁として、新たに大手銀行のスベルバンクとガスプロムネフチを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除するほか、ロシアからの核燃料の輸入停止、政府系ニュースチャンネルの停止、ロシア人に対するビザ発給停止、EUへの渡航禁止や資産凍結の対象となる個人や団体の追加などを検討しているという。
ロシア産石油に関しては、禁輸に踏み切った場合の影響について、コスト面を中心に分析作業を急ぐとともに、加盟国ができるだけ安価で安定的に供給を確保できるよう、ロシアに代わる調達先候補の国々と協議を進めているという。ロシアにとって石油は主要な外貨獲得手段であり、欧州委は代替調達先を確保して禁輸に難色を示す加盟国を説得したい考えとみられる。