偽情報対策強化へ行動規範を更新、グーグルなど34企業・団体が署名

欧州委員会は16日、IT業界に偽情報対策の強化を求める新たな行動規範に、米グーグルやメタ(旧フェイスブック)、ツイッターなど34の企業・団体が署名したと発表した。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻を機に、ネット上で拡散される偽情報の問題が深刻化しており、より透明性が高く安全で信頼できるオンライン環境の実現に向けて対策を急ぐ。

今回の「偽情報に関する行動規範」は、プラットフォーム事業者と広告業界が自主的な対策として18年に策定した行動規範を改訂したもの。16年の米大統領選挙や英国のEU離脱を決めた国民投票では、ソーシャルメディアを通じた外国の干渉が指摘されており、19年5月の欧州議会選挙を控えて欧州委が業界側に自主規制の強化を求めた経緯がある。

EUは現在、巨大IT企業に違法コンテンツの削除や偽情報の拡散防止などの対応を義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」の施行に加え、政治広告の透明性を高めて選挙介入や世論操作を阻止するための新たな規制の導入を目指している。24年の次期欧州議会選挙に向けて偽情報対策の実効性を高めるため、新ルールに合わせて行動規範の内容を更新した。

行動規範に署名した企業・団体にはマイクロソフトや動画投稿アプリ「ティックトック」、ゲーム配信プラットフォーム「ツイッチ」などのほか、アドテク企業やファクトチェック推進団体、市民団体も含まれている。

偽情報の拡散を防止するため、企業は偽アカウントやボット、ディープフェイク(人工知能を使って生成される検出が困難なフェイク動画)を監視するほか、偽情報の発信者に広告収入が入らないよう、信頼性の低いサイトへの広告表示を無効にすることが求められる。また、プラットフォーム事業者はユーザー向けに偽情報を見分け、警告するためのツールを提供する一方、研究者が自社のデータに容易にアクセスできるようにする必要がある。政治広告についてはひと目でわかるようラベルを表示し、スポンサーや広告料金としていくら支払われたかなどを明示して透明性を高めるよう促す。

行動規範に署名した企業は6カ月以内に一連の対策を実行に移し、欧州委に対して定期的に進捗を報告しなければならない。対応を怠った場合、世界売上高の最大6%の制裁金が科される可能性がある。

欧州委のヨウロバー副委員長(価値・透明性担当)は声明で「ウクライナへの侵攻を続けるロシアが攻撃の一環として偽情報を流したり、他の地域でも偽情報によって広範な民主主義への攻撃が行われている中で、今回の行動規範が策定された。われわれはネット上を流れる偽情報の影響を軽減するための極めて重要なコミットメントと、より強固なツールを手に入れた」と強調。ブルトン委員(域内市場担当)は「偽情報はわれわれのデジタル空間に侵入し、日常生活に具体的な影響を及ぼす。偽情報を拡散することで1ユーロたりとも金銭的インセンティブを得ることがあってはならない」とつけ加えた。

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