ポーランド鉄鋼生産は昨年、前年比12%増の800万トンに拡大した。昨年4月時点での予測を大きく下回ったものの、需要が着実に伸び、価格も上昇する傾向にあることから、業界企業は今後の業況を楽観視している。
\熱延鋼、冷圧鋼ともに需要が回復し、鉄鋼消費量は前年比20%増の1,000万トン弱まで拡大した。ただ、輸入が22%増の670万トンに拡大する一方で輸出は5%増の420万トンと伸び悩み、製鉄所の稼働率は63%にとどまっている。金融危機前の生産実績を超えるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
\昨年後半から原料価格が上昇していることもあり、鉄鋼メーカーの見通しは明るくなっている。ポーランド鉄鋼流通業連合会(PUDS)によると、下半期の鉄鋼総売上高は30%増加。企業によっては50%の伸びを記録した。
\懸念材料は、原料となる鉄鉱石や鉄くず、コークスの値上がりだ。価格改定の周期が1年から3カ月へと短縮しているため、見通しを立てるのが難しくなっている。
\ポーランドは鉄鉱石の年間需要700万~900万トンを主にロシアとウクライナから調達している。また、原料炭も950万~1,050万トンと推定される消費量のうち一部を輸入に頼る。今年は原料炭の価格が大幅に上昇すると予想されており、これがポーランド鉄鋼業界の足かせとなる可能性が指摘されている。
\ \■コークス増産へ
\ポーランドのコークス生産量は昨年970万トンとなり、世界全体の1.6%を占めた。今年は1,100万トンが見込まれる。コークス輸出では金融危機に襲われた2009年に中国を抜いて世界1位に躍り出た。昨年の輸出量は630万トンで中国の2倍となっている。
\国内生産能力の拡大に向けて、鉱業・鉄鋼各社は投資を実施している。欧州連合(EU)最大のコークスメーカーで国営のJSWグループは今年初め、プジヤジン工場で新しいコークス炉を稼働させた。これにより年産能力は70万トン増の320万トンに拡大した。産業持ち株会社Zarmenグループに属するチェンストホヴァ・ノヴァ・コークス工場でも9月にコークス炉を更新し、生産能力を倍増させる見通しだ。
\ \■業界再編はこれから
\ポーランドの鉄鋼業界には大手企業が少なく、再編も進んでいない。今年2月に世界最大手のアルセロール・ミタルがCognorグループから販売事業を買収し、鉄鋼流通大手が誕生したのは例外的だ。
\ただ、各社とも事業拡大に向け、国営・競合企業の買収に向けて動き始めている。Alchemiaグループは今年1月、ISD Huga Czestchowa(旧Rurexpol)の鋼管工場を1億ズロチで買収した。11月から入札手続きが進められているHuta Andrzejの買収についても、アルセロール・ミタルと同様に関心を示している。また、溶接鋼管メーカーのFerrumと鋼管・型鋼メーカーHW Pietrzak Holdingは2月末、合併に向け基本合意書に調印した。
\ポーランド政府は6月末にJSWの部分民営化を実施する計画だ。ワルシャワ証取市場での新規株式公開(IPO)で持ち株を放出する方針。株式の新規発行を伴わないため、設備近代化に振り向けられるのは調達資金(100億~120億ズロチ)の一部とみられている。民営化後も過半数株は政府が保有する。
\政府はほかにも国有コークスメーカーを売却したい意向で、メディアは有力候補として石炭輸出最大手Weglokoks、カトヴィツェ石炭ホールディング(Katowicki Holding Weglowy:KHW)などを挙げている。ヴァウブジフのヴィクトリア・コークス工場については3月半ばまでにJSW、ティッセンクルップのMinEnergy、Zarmen、チェコ系投資会社のペンタ・インベストメンツが買収案を提示した。(1PLN=30.39JPY)
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