エルドアン大統領は20日、中央銀行のナジ・アーバル総裁を解任した。中銀総裁の交代は過去2年間で3度目。通貨リラ安・高インフレに利上げで対応するアーバル氏の「正統派」金融政策で、中銀に対する市場の信頼が回復しつつあったところの解任劇となった。新総裁に大統領と同じ低金利論者のシャハップ・ガヴジュオール氏が就任したことも重なり、通貨危機再燃への懸念が強まっている。
トルコ中央銀行は規定上、政府から独立して金融政策を実施できることになっている。しかし、総裁がエルドアン大統領の意に沿わなければ、いつ解任されてもおかしくないのが実情だ。アーバル氏は昨年11月の就任後、4カ月の間に金利を合わせて8.75ポイント、19%へ引き上げ、通貨リラの下落を食い止めた。しかし、17日の最後の利上げが大統領には「行き過ぎ」と映ったようだ。
ガヴジュオール新総裁は国内金融業界では名の知れた銀行家で、政府寄りの新聞『イェニ・シャファク』に中銀の利上げ策を批判するコラムを寄稿していた。アナリストの中には、新総裁が次回定例理事会を待たずに利下げを実施するとの観測もある。
エルドアン政権は低金利を柱に、建設業をはじめとする産業の景気浮揚に成功し、これが国民の人気を支えてきた。しかし、2018年の通貨危機以来の経済不振で支持率が低下しており、さらなる景気の冷え込みにつながる利上げを極力防ぎたいというのが政府の本音だ。
ただ、これは問題の先送りに過ぎない。トルコは経常赤字を国外からの借入で相殺してきた。また、経済の構造上、安定成長には国外からの新規投資が不可欠だ。まともな金融政策を実施しなければ投資家の信用はもどらず、経済破綻の危険が高まる。