ロシアが債務不履行、金融制裁で送金できず

●国際金融市場はこの展開をすでに織り込み済み

●対外債務の不履行はロシア革命の1918年以来で初めて

ロシアの外貨建て国債の未払い猶予が27日で期限切れとなり、「債務不履行」となった。政府の支払い能力には問題がないが、ウクライナ侵攻に伴う欧米などからの制裁によって国際為替・決済サービスが利用できず、債権者に利払いが届かない状況だ。ただ、国際金融市場はすでにこのシナリオを織り込み済みで、ルーブル急落やロシア金融システムの機能停止といった直近の影響はなさそうだ。

今回の未払いはロシア政府の財務状況とは関係がない。中央銀行によると、同行の外貨準備高は6,000億ドル弱で、制裁で凍結されたものを除いても約3,000億ドルに上る。これに対してドル建て債務は400億ドル、外国債権者の保有分はその半分のおよそ200億ドルにとどまる。政府債務は国内総生産(GDP)の20%で、欧米の工業国と比べて低い水準にある。

このような状況のなか、正式に「支払い不能(デフォルト)」と認定されるかどうかは不透明だ。いずれにしても、2月の侵攻直後に国債相場は急落し、取引額はすでに「デフォルト水準」まで下がっている。ロシア政府の信用は失墜し、長期的にみて、新たな貸し手をみつけるのは難しい。戦争が終わっても信用回復には時間がかかり、資源に偏重する経済を改革していく資金がなかなか得られないだろう。

西側諸国はロシアに対して幅広い制裁措置を発動してきた。主要銀行を国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除するなどの金融制裁は、その柱の一つだ。今回の債務不履行に至った直接のきっかけは、米国政府が国内銀行に対してロシアの債務履行に関連する決済を取り扱うことを5月25日以降、禁止したことにある。今回の未払い額は総額で1億米ドル相当(2,900万ユーロと7,100万ドル)に上る。

ロシア政府は、連邦証券保管機関(NSD)を通じて国債関連決済を行うとしているが、NSDも制裁対象となっているため、外国への送金は不可能だ。プーチン大統領は先週の大統領令で、「ルーブルで支払った段階で債務を履行したこととする」ことを定め、ロシア側は義務を果たしているという立場を示した。債権者はロシアの銀行に口座を開けば利払い・償還額を受け取れるとしている。

ロシアがデフォルトに陥ったのは1997年の金融危機以来。対外債務に限ると、ロシア革命の1918年以来で初めてとなる。

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