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2010/2/3

経済産業情報

咳止め成分抽出に関する特許は無効=欧州特許庁

この記事の要約

欧州特許庁(EPA)は1月26日、独Dr. Willmar Schwabe GmbH & Co. KG(カールスルーエ、以下:Schwabe)の咳止め薬「Umckaloabo」に関する製法特許を無効と裁定した。 […]

欧州特許庁(EPA)は1月26日、独Dr. Willmar Schwabe GmbH & Co. KG(カールスルーエ、以下:Schwabe)の咳止め薬「Umckaloabo」に関する製法特許を無効と裁定した。同薬の原料となる南アフリカ原産の植物から薬効成分を抽出する手法は「以前から十分に知られたもので」、特許保護の対象にならないとしている。今回の判決はいわゆる「バイオパイラシー」(途上国の住民が伝統的に利用してきた生物資源を多国籍企業などが利用し莫大な利益を上げることを指す。NGOなどは途上国住民に適正な利益配分が行われていないなどとして問題視している)を批判する動きにも勢いを与えそうだ。

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同係争で問題となったのは、テンジクアオイの一種で南アフリカとレソトのごく一部の地域に自生する「Pelagornium sidoides」と「Pelagornium reniforme」と呼ばれる植物。原告である南アフリカ南部アリスの先住民団体は、当該植物の薬草としての効果と薬効成分の抽出方法は同地域の呪術医に古くから知られていた知識だと主張したうえで、国際的な企業がこれを特許として登録することは伝統的知識の略奪に等しいとして、非政府組織(NGO)の援助を受けて提訴に踏み切った。

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EPAの今回の判決はあくまで製法特許に関連する部分のみで、バイオパイラシーをめぐる法的問題は審理の対象となっていない。ただ、訴訟を支援したNGOの関係者は、「特許無効の政治的なインパクトは非常に大きい」と述べ、判決を高く評価している。

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一方Schwabe側は、◇伝統的な手法とは全く異なる方法で薬効成分を抽出している◇現地の先住民はテンジクアオイを気管支疾患薬として使ってこなかった――として、特許無効の判決を不当と批判。上訴の方針を示している。

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