欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2010/3/3

総合 - ドイツ経済ニュース

ギリシャ財政問題、パパンドレウ首相は「国家破たんの危機」を明言

この記事の要約

ギリシャの財政赤字問題は解決の糸口が見えてこない。欧州連合(EU)は同国が財政再建に向け最大限の自助努力を行えば何らかの支援を行う構えを見せているが、ギリシャにそうした姿勢を取る能力があるかが疑わしいのだ。デフォルト回避 […]

ギリシャの財政赤字問題は解決の糸口が見えてこない。欧州連合(EU)は同国が財政再建に向け最大限の自助努力を行えば何らかの支援を行う構えを見せているが、ギリシャにそうした姿勢を取る能力があるかが疑わしいのだ。デフォルト回避に必要な国債の借り換えもクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を利用した投機の影響や、銀行などが引き受けに消極的なことを受け、不透明感がただよう。

\

ギリシャの財政赤字は昨年、国内総生産(GDP)に対する比率がユーロ圏最悪の12.7%に達し、EU財政規律の許容上限である同3%を大幅に上回った。これを受けパパンドレウ首相は1月中旬、2010年の赤字をGDP比8.7%まで削減し、2012年には上限枠内の同2.8%に引き下げるとの財政再建策案をまとめた。目標実現に向けては年金支給開始年齢の引き上げや公務員給与の削減、消費税の引き上げを実施するとしている。

\

EU加盟国は2月中旬、この計画を承認したものの、計画通りに財政赤字を圧縮できるかについては各国から疑問の声が出ており、今月1日にアテネを訪問したレーン欧州委員(経済・通貨問題担当)は「ギリシャは財政赤字を削減するための追加措置を数日以内に公表しなければならない」と明言。追加措置を打ち出さなければ、欧州委と欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)が今月中旬に行う同国の赤字削減計画の実施状況の検証で肯定的な評価は得られないとの立場を示した。

\

これに対しギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は「必要なことはすべて行う」と述べ、追加措置の実施を約束した。パパンドレウ首相は3日に予定する臨時閣議で具体策を決議する意向だ。

\

\

公的機関は歳出入を管理できず

\

\

こう見てくると、ギリシャが自助努力を行い、EUが支援するというシナリオが順調に動き出すような印象を受ける。だが、ギリシャの内情を踏まえると、道のりはかなり険しい。

\

問題はまず、国民が自分の国の置かれている状況を理解していないことだ。財政削減に反対する労働組合は先月24日、大規模なストライキを実施し、航空、鉄道、船舶などの交通機関を全面的に麻痺させた。ストの結果ギリシャの財政再建とユーロに対する市場に信認が一段と落ち、欧州全体に悪影響をもたらしたことを市民は意に介していないようで、今月2日にはタクシー運転手が再度のストを行った。16日には公務員が24時間ストライキを予定している。

\

また、有力な消費者団体Inkaは独『フォーカス』誌がギリシャ人を詐欺師と揶揄したことを受け、ドイツ製品やドイツ企業との取引を全面的にボイコットするよう国民に呼びかけている。

\

問題は国民の支持を得るのが難しいということにとどまらない。財政を抜本的に立て直さなければならないにもかかわらず、信頼できる会計制度がそもそも公的機関に存在しないのだ。

\

欧州統計局のヴァルター・ラーダーマッハー局長が『南ドイツ新聞』に明らかにしたところによると、公立病院や自治体は歳出入をしっかり記録していないため、ギリシャの統計局には正確なデータがなく、不明な個所はすべて推定で補っているという。長年にわたり虚偽の財政統計をEUに提出してきたのはこうした背景があるためで、同局長は「不正確なデータを提出する国はほかにもあるが、ギリシャのようなひどい粉飾を行う国はない」と明言した。

\

\

ギリシャ国債の引き受け

\

独金融機関は見合わせ

\

\

『ハンデルスブラット』によると、ギリシャ国家に対する不信感は国外企業の間でも強い。支払いが極めて悪いためで、製薬大手の独メルクはギリシャの公立病院に対する売掛金を回収できないため、2009年決算で1,250万ユーロの減損処理を行った。請求書に対する支払いが過去3年間、ストップしているという。04年のアテネオリンピックでセキュリティシステムを納入したシーメンスは品質に問題があったとのクレームを付けられ、大幅な値下げを余儀なくされた。こうしたケースは枚挙にいとまがないようだ。

\

ギリシャ国債は4月に110億ユーロ、5月にも116億ユーロが償還期限を迎え、今年は新規国債を計500億ユーロ以上発行する必要がある。だが、ギリシャ国債に対する信用は大幅に低下しており、ドイツではドイツ銀行やポストバンクなどの一般行のほか、国家向けの融資を本業とするヒポ・リアル・エステート、ユーロヒポもギリシャの新規国債を引き受けない意向だ。

\

国際的な支援がなければ同国はデフォルトに陥る恐れがあり、パパンドレウ首相は2日、国家破たんの危機から「祖国を守るために闘う」と発言。EU加盟国に対し支援を呼びかけた。

\