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2010/3/10

経済産業情報

熱泳動でアプタマーを簡単にスクリーニング

この記事の要約

ミュンヘン大学ナノサイエンスセンター(CeNS)のディーター・ブラウン教授を中心とする研究チームは、標的タンパク質と特異的に結合する核酸分子(アプタマー)の候補物質を簡単にスクリーニングできる技術を開発した。熱泳動(サー […]

ミュンヘン大学ナノサイエンスセンター(CeNS)のディーター・ブラウン教授を中心とする研究チームは、標的タンパク質と特異的に結合する核酸分子(アプタマー)の候補物質を簡単にスクリーニングできる技術を開発した。熱泳動(サーモフォレシス)と呼ばれる効果を利用し、アプタマーと標的タンパクの結合に伴う水溶液中の動きをとらえるもので、数秒で結果が分かるという。

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アプタマーは抗体同様、標的分子に結合することにより薬効を示す。また、抗体では実現できなかった高い親和性と特異性で標的分子と結びつくことが可能なことから、高い有効性を持つ抗ガン剤として大きな期待が寄せられている。

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熱泳動は、温度勾配のある空間を漂う微細な粒子が低温側に移動する現象のことで、煙突の内壁にすすが付着する現象も熱泳動の効果によるものだ。

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スクリーニングのベースとなる技術は、CeNSとミュンヘン大のスピンオフ企業Nano Temperが開発した「Microscale Thermoporesis」と呼ばれる熱泳動分子測定システム。溶液中の物質が別の分子と結びついて新たな構造となった時に、複合体周辺に存在する水分子の位置が動くことに着目して開発された。変化の速さを測定することで物質と分子の結合の有無を確認できるほか、親和性も定量化できるのが大きな特徴だ。

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従来のアプタマーのスクリーニングでは通常、培養液として人工的に調製された緩衝液が使われる。この場合、当該物質が血液中で結合親和性を示すかがほとんど確認できないため、緩衝液中で良好な結果を出しても、生体内で同じ反応が起こらない可能性がある。研究チームはこれを踏まえ、「Microscale Thermoporesis」によるスクリーニングで血液を培養液に使えるかをテスト。血液中でも問題なく測定できることを確認した。

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同研究の成果は『Angewandte Chemie』(2010年2月)に発表された。

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