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2010/4/28

経済産業情報

独バイオ業界の苦境続く、資金難と開発停滞の悪循環に

この記事の要約

ドイツでバイオテクノロジー企業の設立ブームが起きてから10年あまりが経過したにもかかわらず、期待されたていたような大きな成果はあまり出ていない。新薬認可にこぎつけるなど成功を収めた企業はごくわずかで、医薬品の研究開発を手 […]

ドイツでバイオテクノロジー企業の設立ブームが起きてから10年あまりが経過したにもかかわらず、期待されたていたような大きな成果はあまり出ていない。新薬認可にこぎつけるなど成功を収めた企業はごくわずかで、医薬品の研究開発を手がけたベンチャー企業はその多くが消滅した。また、金融危機の影響でベンチャー・キャピタル(VC)のバイオ企業投資が大きく縮小。資金難から開発が進まず、資金調達が一層難しくなる企業も少なくない。20日付『ハンデルスブラット』が報じた。

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独バイオ業界団体のBio Deutschlandがこのほど発表したデータによると、独バイオ企業が2009年にVCやプライベートエクイティを通して調達した資金は前年比35%減の1億3,200万ユーロに後退した。増資あるいは社債発行による資金調達は同7%減の8,700万ユーロと減少幅が比較的小さいものの、金融危機以前に比べると大きく後退、資金難の深刻さが分かる(グラフ参照)。

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独バイオ業界が抱える問題の1つは、市販化にこぎつける薬が少ないことだ。実績を出せなければ業界全体の評価だけでなく投資家の投資意欲も下がる。アーンスト&ヤング(E&Y)の調べによると、05年の時点で臨床段階(フェーズ2/フェーズ3)にあった薬効成分プロジェクトは75件に上ったが、このうち医薬品当局の認可を受けたのは4件に過ぎない。また、他社からのライセンス供与(インライセンシング)や同業買収による知的財産権の獲得なしに開発から認可までを単独で成し遂げたのはミュンヘンのTrion1社にとどまる。

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VCによる出資が受けられても資金難が完全に解消するわけではない。新薬開発は順調に進んでも10年以上の年月がかかる一方、VCファンドの多くは3~4年で償還期限を迎える。このためバイオ企業は当面の事業資金が確保できるや次の投資家探しに奔走せねばならない。この結果◇管理コストが膨れ上がる◇本業に身が入らない――といった問題が生じる。総合医療サービス大手フレゼニウスからの資金援助を受け製品化に成功したTrionのホルスト・リントホーファー社長は、「VCから資金を調達していたら、研究開発にこれほど集中はできなかっただろう」と明言している。

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