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2010/6/30

経済産業情報

エネルギー・環境政策のジレンマを学会が指摘

この記事の要約

ドイツ物理学会(DPG)はこのほど、ドイツの電力供給動向に関する研究報告書を発表、再生可能エネルギーによる発電の規模は不十分で、化石燃料への依存度は依然として高いと指摘した。そのうえで、原発廃止政策を二酸化炭素(CO2) […]

ドイツ物理学会(DPG)はこのほど、ドイツの電力供給動向に関する研究報告書を発表、再生可能エネルギーによる発電の規模は不十分で、化石燃料への依存度は依然として高いと指摘した。そのうえで、原発廃止政策を二酸化炭素(CO2)の排出削減政策と両立させることは難しく、現状では化石燃料依存から脱却するメドが立たないと論じている。

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DPGは143ページにわたるレポートの中で、ドイツ国内で用いられている電源(石油、石炭、原子力、太陽光、風力など)、電力輸送、蓄電の3つを主要テーマに据え、現状を調査するとともに今後の展望を中立的な立場から考察している。

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報告書によると、電力は国内エネルギー消費量全体の2割を占め、その規模は2000~2008年に年1.2%のペースで増加した。電源別の発電量の割合(07年)は石炭が46.6%、石油1.5%、天然ガス11.9%と、化石燃料への依存度が高い。

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原子力は発電量全体の22%を占める。ただ、原発は出力を短時間で調整できないという特性から主にベースロード(昼夜を問わず常時必要になる最低電力量)電力の供給源となっており、ベースロードに占める原発の割合は5割に達する。

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政府が進める原発廃止が仮に実現した場合、再生可能エネルギー電力(発電量14.2%)は原発の減少分を補えない。また、発電量が天候に大きく左右されベースロード電力に向かないため、現状では原発に代わりうる電源はCO2を大量に排出する化石燃料以外になく、政府のエネルギー・環境政策はジレンマに陥るという。

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レポートはこのほか、CO2削減に役立つとして政府が奨励する熱電併給システム(コジェネ)の問題点にも言及。熱と電力を別々に生産するシステムと比べて必ずしもエネルギー効率が高いとは言えず、機種によっては明らかに効率が悪いと指摘した。

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