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2010/7/14

経済産業情報

着床前診断、胚保護法に「抵触せず」=最高裁

この記事の要約

体外受精した受精卵から細胞を取り出して遺伝子検査を行い、遺伝子異常のない卵だけを子宮に戻して妊娠させる「着床前診断(PID)」の是非をめぐる係争で連邦司法裁判所(最高裁、BGH)は6日、PIDは胚保護法(ESchG)に抵 […]

体外受精した受精卵から細胞を取り出して遺伝子検査を行い、遺伝子異常のない卵だけを子宮に戻して妊娠させる「着床前診断(PID)」の是非をめぐる係争で連邦司法裁判所(最高裁、BGH)は6日、PIDは胚保護法(ESchG)に抵触しないとの判断を示した(訴訟番号:5 StR 386/09)。ヒト胚を乱用するものではなく、また、遺伝子異常の見つかった卵の廃棄も、「妊娠を成立させる」という計画に基づく行為であり、処罰の対象にはならないとした。

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被告はベルリンで不妊治療を行う医師で、2005~06年にかけて3組の夫婦に体外受精を行った。3組のカップルのうち2組は夫か妻のどちらかに遺伝子疾患があり、残り1組は先に生まれた子供に重度の障害があった。このため同医師はカップルの受精卵計8個を対象にPIDを実施、このうち4個で遺伝子異常が見つかった。医師が患者の女性にこの事実を知らせたところ、3人とも遺伝子異常のある卵を子宮に戻すことを拒否したため、医師は異常のない卵だけを患者の体内に戻し、残りは破棄した。

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ドイツではこれまで、ESchG1条1項2(生殖技術の乱用)と2条1項(ヒト胚の乱用)によりPIDが実質的に禁止されていると理解されてきた。ただ、PIDの実施や遺伝子異常のある卵の破棄について明確に規定する法律は存在せず、医師は自らが行った治療の法的な是非を問うために警察に出頭。検察側がESchG違反として起訴した。

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BGHの裁判官は、ESchGではPIDに関する規定が一切存在せず、立法機関(議会)にPIDを禁止する意図があるとは読み取れないとの考えを示したうえで、遺伝疾患のある両親の受精卵を検査もせずに子宮に戻し着床させた場合、奇形や発達異常による流産・死産や妊娠中絶の危険性が高いと指摘。PIDはそうしたリスクを引き下げ正常な妊娠を実現するのに適した手段だとの判断を示した。

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