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2011/5/18

経済産業情報

環境団体にも建設差し止めの訴権あり=欧州司法裁

この記事の要約

環境に悪影響をもたらす懸念のある産業施設に対し環境団体が建設差し止め訴訟を起こせるか否かをめぐる裁判で、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)は12日、環境団体にも個人同様に判決請求権(訴権)が認められるとの判断を示 […]

環境に悪影響をもたらす懸念のある産業施設に対し環境団体が建設差し止め訴訟を起こせるか否かをめぐる裁判で、欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)は12日、環境団体にも個人同様に判決請求権(訴権)が認められるとの判断を示した(訴訟番号:C-115/09)。今回の判決を受けて、大型石炭発電所などの建設プロジェクトが中止に追い込まれる可能性が高まりそうだ。

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係争の発端は、エネルギー事業者のTrianelが独ノルトライン・ヴェストファーレン州のリューネンに計画した石炭発電所だ。アルンスベルク県行政当局は08年5月、計画に特に問題はないとして建設を許可した。

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これに対しドイツ環境自然保護連盟(BUND)は「当該区域には5つの動植物生息保護区域が含まれている」と批判。ミュンスター高等行政裁判所に建設認可の取り消しを求める行政訴訟を起こした。同行政裁の裁判官は、ドイツの現行法では産業施設建設差し止め訴訟を起こせる主体が直接的な影響を受ける住民(個人)に限られており、BUNDの訴えは審理対象にならないとしながらも、EU指令では公衆参加の規定が異なるとして、ECJの判断を仰いでいた。

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ECJの裁判官は今回の判決で、訴権を個人にしか認めないのは「環境に関連する計画策定に広く公衆が参加することを目指すEU指令(公衆参加指令:2003/35/EC)」に相容れないなどと指摘。BUNDには訴権があるとの判断を示した。そのうえでミュンスター高等行政裁に対し、当該の石炭発電所の建設が環境規定を満たしているかを基準に判決を下すよう指示した。

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