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2011/5/25

総合 - ドイツ経済ニュース

ガソリンスタンド業界の寡占にメス入れか

この記事の要約

ガソリンスタンド業界の寡占是正に向けて独当局が動き出しそうだ。連邦カルテル庁は26日に公開予定の自動車燃料価格調査の最終報告書で、健全な市場競争が機能していないとの見解を表明する。政府はこれを受けて何らかの対策を打ち出す […]

ガソリンスタンド業界の寡占是正に向けて独当局が動き出しそうだ。連邦カルテル庁は26日に公開予定の自動車燃料価格調査の最終報告書で、健全な市場競争が機能していないとの見解を表明する。政府はこれを受けて何らかの対策を打ち出すもようで、所轄大臣のフィリップ・レスラー新経済相は23日、「法的枠組み条件を強化する」考えを示唆した。経済界には過度の規制への警戒が広がっている。

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週末や連休前になると、燃料価格が全国のガソリンスタンドで一斉に値上がりする。これは以前から指摘されていることで、全ドイツ自動車クラブ(ADAC)などは市場競争が機能していないと批判してきた。

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今回の報告書ではガソリン値上げの仕組みが詳細に明らかにされている。『ビルト・アム・ゾンターク』紙が独自入手した情報をもとに報じたところによると、値上げの先陣を切るのはほとんどの場合2大大手のAral/BPかシェルで、2社のうちどちらかが価格を上げると、数時間後にもう1社の系列店が全国的に追随。さらに業界3~5位のJet、エッソ、トタルも後に続く。(グラフ1を参照)

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5社系列のガソリンスタンドはそれぞれ、競合の価格を常時チェックしている。チェック・報告体制は緊密で、これが全国一斉の値上げにつながっているようだ。5社が違法な価格カルテルを結んでいる事実は調査では確認できなかった。

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調査は2007年1月から10年6月の3年半にわたって実施された。対象となったのはハンブルク、ケルン、ライプチヒ、ケルンのスタンド各100カ所。価格の上げ下げはすべてもれなく記録されており、データの信用性は高い。

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値上げが全国的に短時間で行われるのに対し、値下げは緩慢にしか進まない。カルテル庁はこれを市場競争が機能していない証拠として批判しており、政府に独禁法の強化を求めるとみられる。カルテルの事実が確認されない以上、現行法では大手5社に処分を下すことができないためだ。

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レスラー経済相は23日のプレスリリースで「市場を踏み込んで監視し競争法違反を決然と取り締まる強力なカルテル庁が必要だ」と述べており、同庁の権限は強化される可能性が高い。

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ガソリンスタンド業界の規制強化を求める声は与党内でも強い。12日に経済相を退任した自由民主党(FDP)のライナー・ブリューデルレ新院内総務はその最先鋒で、競争制限禁止法(GWB、独禁法)を改正して独占・寡占企業を解体(集中排除)できるようにする意向だ。集中解除ルールの導入は政権協定にも盛り込まれており、導入される可能性は十分にある。

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経済界は集中排除を警戒

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カルテル庁の報告書に対し、石油業界連盟(MWV)のクラウス・ピカルト専務理事は公共放送ARDの番組で、ガソリンの市販価格は純粋な競争の結果だと反論。スタンドの利益(税引き前ベース)はリッター当たり1セントに過ぎないと指摘した。週末などの値上げについてはごく普通の競争行為だとしている。

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一方、独産業連盟(BDI)は集中排除ルールを強く警戒。ドイツの産業立地競争力に致命的な影響を与えかねないとして導入の見合わせを求めている。

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ドイツのガソリンスタンド数は長年、減少が続いている。その数はピーク時の1960年代末が約4万7,000店だったのに対し、現在は1万5,000店を割り込んでいる(グラフ2を参照)。燃料販売だけではもはや経営が成り立たず、売り上げの半分をコンビニ事業が占めるのが実情だ。

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大手5社のシェアが70%を超え市場が寡占されているのは事実だが、こうした実情を踏まえると、ガソリン販売でスタンドが暴利をむさぼっている姿は浮かんでこない。市場競争専門の経済学者は『ヴェルト』紙に対し、「ガソリン市場は価格の変動が激しく、スタンドの利益は少ない」と指摘している。

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