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2011/6/8

ゲシェフトフューラーの豆知識

育休中の勤務時間変更、3度目以降の請求は却下可

この記事の要約

被用者は育児休暇期間中、週30時間を上限に勤務することができる。これは育児休暇法(BEEG)15条第4項に明記された権利である。同条第5項には勤務時間や曜日について雇用主に文書で申請し、4週間以内に合意するルールが記され […]

被用者は育児休暇期間中、週30時間を上限に勤務することができる。これは育児休暇法(BEEG)15条第4項に明記された権利である。同条第5項には勤務時間や曜日について雇用主に文書で申請し、4週間以内に合意するルールが記されている。では労使が合意できなかった場合はどうなるのだろうか。ここではハンブルク州労働裁判所が5月に下した判決(訴訟番号:5 Sa 93/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのはコンサルティング会社の人事部で労働法問題を担当する女性社員。同社員は2008年6月5日に娘を出産したことを受け、2010年6月4日までの2年間、育児休暇を取得した。また、08年11月6日付の文書で、09年1月からパートタイムで勤務することを雇用主に申請し承認された。労働時間は同1月1日から5月31日までが週15時間、6月1日~10年6月4日までが週20時間となっていた。

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原告社員は10年4月7日付の文書で、育児休暇を2011年6月4日まで延長することを通知。同時に週20時間のパート勤務を育休が終了する時期(2011年6月4日)まで延長することを申請した。雇用主がパート勤務延長申請を却下したため、提訴した(育休自体は権利者=ここでは原告社員=の一方的な意思表示によって取得できる権利=形成権=のため、雇用主が拒否することはできない)。

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第1審のハンブルク労働裁判所は原告の訴えを認める判決を下した。これに対し第2審のハンブルク州労裁は原告敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、育休中は勤務時間の削減を2度請求できるとしたBEEG15条第6項の規定を指摘。原告が2010年6月5日~11年6月4日を対象に行った請求は3度目に該当し、雇用主は却下できるとの判断を示した。

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同条項中にある「勤務時間の削減」の回数については勤務時間を減らした回数でなく、当該の被用者が雇用主と結ぶパート勤務契約の件数を意味するとの解釈を提示。2度目のパート契約(09年6月1日~10年6月4日)の勤務時間(週20時間)が最初の契約(09年1月1日~5月31日)の勤務時間(15時間)を上回ったこと、および2度目の契約と10年6月5日~11年6月4日を対象とした3度目のパート勤務申請の勤務時間がともに週20時間で同じことは問題にならないと言い渡した。

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裁判官は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めている。

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