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2011/7/20

経済産業情報

欧州列車制御システム導入を独政府が大幅縮小へ

この記事の要約

独連邦交通省はオランダとイタリアを結ぶ欧州縦断鉄道輸送ネットワークで計画されていた自動列車保安システム「ETCS」のドイツ国内区間への導入規模を大幅に縮小する意向だ。財政状況が厳しいためで、完全に新システムに入れ替える代 […]

独連邦交通省はオランダとイタリアを結ぶ欧州縦断鉄道輸送ネットワークで計画されていた自動列車保安システム「ETCS」のドイツ国内区間への導入規模を大幅に縮小する意向だ。財政状況が厳しいためで、完全に新システムに入れ替える代わりに既存システムにモジュールを後付けすることで対応し、補助金支出を抑えたい考え。この措置により鉄道設備業界は24億ユーロの減収となる見通しで、強い衝撃を受けている。18日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙が報じた。

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ETCS(European Train Control System)は、欧州の鉄道路線の多くで導入されている統一列車制御システム。欧州連合(EU)が中心となって進めている欧州鉄道交通管理システム(ERTMS)プロジェクトの一部をなし、ドイツではEUと連邦政府がコストの一部を拠出する。今回問題となっているのはロッテルダムからケルン、マンハイム、バーゼル、ミラノを経由してジェノバに至る「A回廊(Corridor A)」と呼ばれるルートで、ルート上に当たる国は協定によって2015年までにETCSを敷設・稼働することが義務づけられている。

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連邦交通省のショイアレ政務次官は6月に開催されたドイツ交通フォーラムで「我々にとって重要なのは欧州統一の鉄道保安規格の実現であり、どの技術を採用するかではない」と発言。また、ペーター・ラムザウアー交通相はFTDに対し「(緊縮財政の中では)何に予算を割くか慎重にならざるを得ない」と述べて、理解を求めた。

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大幅減収となる鉄道設備業界の打撃は大きい。コンサルティング会社SCI Verkehrは2015年までのETCS市場成長率を年平均11%と試算していたが、連邦交通省の方針転換によって「十億ユーロ規模の売上減となる」と指摘する。仏防衛電子システム大手Thalesの担当者も「欧州鉄道網の中核国の1つであるドイツがETCS技術で後れをとることがあってはならない」と述べ、鉄道産業の発展がとん挫しかねないと懸念を示した。

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