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2011/7/27

総合 - ドイツ経済ニュース

ギリシャ第2次支援成立、ECBは民間負担を容認へ

この記事の要約

ユーロ圏17カ国は21日ブリュッセルで臨時首脳会議を開き、一部加盟国の財政危機への対策を取りまとめた。合意の柱はデフォルトの危機が目前に迫るギリシャへの第2次支援と、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う「欧州 […]

ユーロ圏17カ国は21日ブリュッセルで臨時首脳会議を開き、一部加盟国の財政危機への対策を取りまとめた。合意の柱はデフォルトの危機が目前に迫るギリシャへの第2次支援と、財政危機に陥ったユーロ参加国に緊急金融支援を行う「欧州金融安定基金(EFSF)」の機能強化の2点。ギリシャへの新規支援は民間金融機関にも一定の負担を求めることを欧州中央銀行(ECB)が受け入れたことで合意への道が開けた。

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ギリシャは昨年5月、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から総額1,100億ユーロの金融支援を取り付けた。しかし、信用不安は止まらず、国債償還の資金を国債の新規発行で調達できない状況にあるため、第2次支援を要請していた。

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第2次支援は2011~14年を対象としており、総額は1,590億ユーロに上る。ユーロ加盟国とIMFがそのうちの1,090億ユーロを引き受け、残り500億ユーロは民間銀行・保険会社に自主的に負担させるという内容だ。

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自主的な形とはいえ、民間にもギリシャ支援の負担を求めることに対しては、格付け各社が部分的なデフォルト(債務不履行)とみなすと警告していた。

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デフォルトの認定を受けると、欧州中銀はギリシャ国債を担保として受け入れられなくなり、同国債を大量に保有するギリシャの金融機関が資金調達に行き詰るため、ギリシャ支援に民間を関与させることを強く拒否。21日の首脳会談で何らかの合意が得られるかは不透明だった。

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この危機を打開したのはユーロ圏臨時首脳会談に向けて20日にベルリンで開かれた独仏首脳会談だ。参加者は当初、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領の2人だけだったが、協議のなかでECBの関与がないと有効な対策が打ち出せないと判断。フランクフルトのECB本店にいたトリシェ総裁に電話し、ベルリンの首脳会談にすぐに参加するよう要請した。

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トリシェ総裁は同会談で、デフォルト認定受けたギリシャ国債にEFSFが最大350億ユーロの保証を付けることを条件に欧州中銀が同国債を引き続き担保として受け入れることを確約した。

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民間銀行と保険会社はギリシャ国債の買い替えで370億ユーロ、ギリシャによる国債の買い戻しでも126億ユーロを負担する。国債買い替えは償還期間を現在の7年半から15~30年に延長したうえで、金利も従来の4.5%から3.5%程度に引き下げるというもので、国債の価値は21%低減される。買い換えた国債は元本が保証されるものの、利息は保証されない。

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国債買い戻しは流通市場で実施、資金はEFSFがギリシャに融資する。ギリシャ国債の市場価格は大幅に下落しているため、同国はこの措置によっても債務負担が軽減される。

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第2次支援によりギリシャの債務(総額3,600億ユーロ)は260億ユーロ軽減され、国内総生産(GDP)に対する累積債務の比率は現在の160%から2014年末には148%に低下する見通しだ。

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市場での国債買いはECBからEFSFに移管

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EFSFの権限強化はギリシャを震源とした信用不安が他のユーロ圏諸国にも及んでいることへの対策として取り決められたもので、(1)危機に陥った加盟国の国債を流通市場で買い取る(2)危機的状況に陥りそうな加盟国に緊急融資を行う――権限を新たに付与する。

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危機に陥った加盟国の既発国債を買い取ることは欧州中銀が金融市場を安定させるための緊急措置として昨年5月以降、実施してきた。だが、リスクの高い債権を中央銀行が買い取ることは将来的にユーロシステムそのものを崩壊の危機に陥れる恐れがあり、通貨の安定性を重視する独連邦銀行などは強く反対していた。今後は国債買い取りをEFSFが引き受けるため、ECBは本来の金融業務に専念し中立性を高めることができる。

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(2)はギリシャ危機の余波で国債利回りが急上昇しているイタリア、スペインが深刻な危機に陥るのを防ぐ狙いがある。

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ユーロ加盟国はこのほか、すでにEUとIMFの支援対象となっているアイルランド、ポルトガルについても、ギリシャ同様の返済条件緩和を適用することを決めた。

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