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2011/7/27

総合 - ドイツ経済ニュース

社会保険手続き電子化プロジェクトが中止に

この記事の要約

連邦政府は2012年の稼働開始を予定していた社会保険給付手続き電子化プロジェクト(ELENA:electoronischer Entgeltnachweis)を中止する。システム運用の前提となる安全性の高い電子署名が十分 […]

連邦政府は2012年の稼働開始を予定していた社会保険給付手続き電子化プロジェクト(ELENA:electoronischer Entgeltnachweis)を中止する。システム運用の前提となる安全性の高い電子署名が十分に普及しておらず、個人情報保護が不十分にしか機能しないためで、連邦経済省と連邦労働省は18日、同プロジェクトを「できる限り早期に」終了させると発表した。

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ELENAは被用者の給与明細を電子化してドイツ年金保険組合のデータベースで一元管理するプロジェクト。育休手当などの社会保険給付申請時に必要な書類をペーパーレス化し、手続きの迅速化とコスト削減を実現する狙いがあった。データベースはすでに稼働しており、雇用者は2010年から被用者の住所氏名、被保険者番号、社会保障費、就業・休業時間などの情報を登録することが義務づけられている。

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ただ、同システムについてはコスト上の効果を疑問視する声や、個人情報保護が不十分との批判が多く、ブリューデルレ連邦経済相(当時)は昨年、コスト増につながる恐れがあるとしてプロジェクトの棚上げを提案。シュナレンベルガー法相も今年初めにプロジェクトへの疑念を表明した。

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連邦政府はプロジェクト中止に伴い、関連法案の見直しやこれまでに収集したデータの消去に着手する。連邦労働省は雇用者のこれまでの投資が無駄にならないよう、ELENAのシステムを別の形で活用する方針だ。

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一方、独情報通信業界連盟(Bitkom)のディーター・ケンプ会長は、「巨額の投資と長い準備期間をかけておきながら、手のひらを返したように政府がプロジェクトを中止することには驚かざるを得ない」と不快感を示した。

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なお、電子所得税カード(elektrische Lohnsteuerkarte)はELENAとは無関係で、システムは来年1月から稼働する予定だ。

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