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2011/8/10

経済産業情報

振り子式車両で酔いの原因解明、傾斜と遠心力の「タイミング」がポイント

この記事の要約

車体を傾斜させることでカーブを高速走行する振り子式の鉄道車両で乗り物酔いが発生しやすいのはカーブによる遠心力と車体が傾くタイミングにずれがあるためとする調査結果を、スイス・米・フランスの産学協同チームが発表した。両者のタ […]

車体を傾斜させることでカーブを高速走行する振り子式の鉄道車両で乗り物酔いが発生しやすいのはカーブによる遠心力と車体が傾くタイミングにずれがあるためとする調査結果を、スイス・米・フランスの産学協同チームが発表した。両者のタイミングが合っていれば、傾斜角度が高くても乗り心地は悪化しないという。

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列車がカーブを走行するときにはカーブの外側に遠心力が働き、乗り心地の悪さや車両の横転を引き起こす恐れがある。通常の車両ではこれを防止するためにスピードを落とす。一方、振り子式車両車体では車体そのものを内側に傾けることで車体にかかる遠心力を相殺するため、高速で走行できる。ただ、振り子式車両は通常の車両に比べ乗り物酔いを起こす人が多く、具体的な原因はこれまで特定されていなかった。

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チューリヒ大学と米シナイ山医療センター、スイス国鉄(SBB)、仏車両製造大手アルストムの国際産学共同研究チームは、列車の傾斜と乗り心地の関連性を解明するため評価調査を実施。ヴィンタートゥール~ゴッサウ間を走行する3種類の列車(非振り子式車両、リアクティブ型振り子車両、プレディクティブ型振り子車両)でカーブ走行時の物理的データを収集するとともに、乗客に聞き取り調査を行った。

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非振り子式では振り子式に比べカーブ区間の速度が21%遅かったものの、乗り物酔いを起こした乗客はいなかった。

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機関車に搭載されたセンサーの情報から最適な傾斜角を計算する「リアクティブ型」と、路線上の情報を車載コンピューターに記録しておき、カーブに合わせて傾きを予め制御する「プレディクティブ型」との比較では、リアクティブ型の方がカーブで遠心力が発生してから車体を傾けるまでの時間が長かった(傾斜角4度でリアクティブ型が0.8秒、プレディクティブ型が0.4秒)。

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リアクティブ型では傾斜角度が増すにつれて乗り物酔いを起こす乗客が増えた一方、プレディクティブ型では角度が増してもそうした乗客が増えなかった。研究チームはこれを受け、遠心力と傾斜のタイミングを改善することで乗客の快適性が向上すると結論づけた。

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研究の結果は、米国連邦実験生物学会誌『FASEB Journal』に掲載された。

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