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2011/8/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

HIV感染で解雇、試用期間であれば可能

この記事の要約

HIV(エイズウイルス)に感染した従業員を解雇することは通常、道義的、法的に許されない。日本でも感染を理由とする解雇を無効とする判決がすでに出ている。だが、試用期間中の社員に限るとドイツでは解雇しても法的に問題がないよう […]

HIV(エイズウイルス)に感染した従業員を解雇することは通常、道義的、法的に許されない。日本でも感染を理由とする解雇を無効とする判決がすでに出ている。だが、試用期間中の社員に限るとドイツでは解雇しても法的に問題がないようである。ベルリン労働裁判所が先ごろそうした判決(訴訟番号:17 Ca 1102/11)を下したのでここで紹介する。

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裁判を起こしたのは製薬会社に化学技術助手として採用された男性社員。同社員は試用期間中にHIVに感染。その連絡を受けた雇用主は安全性を理由に解雇通告した。

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これを受けて同社員は、HIV感染を理由に解雇することは許されないと主張。また解雇は一般平等待遇法(AGG)で禁じられた障害者差別に当たるとして、解雇無効を求める訴訟を起こした。

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これに対しベルリン労裁の裁判官は、試用期間中の被用者には解雇保護規定が適用されないと指摘。解雇するかどうかは雇用主に裁量にかかっているとの判断を示した。また、HIVに感染しただけでは障害者とは言えないとして、解雇はAGGにも違反しないと言い渡した。解雇を恣意的だと原告が批判したことについても、原告の業務内容を考えると解雇は理解できるとの認識を提示している。

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一方、同労裁の広報担当者はメディアの問い合わせに対し、試用期間の終了後であれば、解雇は違法になるとの認識を示した。

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