欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/8/31

総合 - ドイツ経済ニュース

独自動車業界、競争力で高い評価

この記事の要約

ドイツの自動車産業が上昇気流に乗っている。最近相次いで発表されたレポートでは同国メーカーや産業立地競争力に軒並み高い評価が下されており、フォルクスワーゲン(VW)は世界のメーカー競争力ランキングでダントツの1位を獲得。ド […]

ドイツの自動車産業が上昇気流に乗っている。最近相次いで発表されたレポートでは同国メーカーや産業立地競争力に軒並み高い評価が下されており、フォルクスワーゲン(VW)は世界のメーカー競争力ランキングでダントツの1位を獲得。ドイツは一般的に弱いとされる電気自動車(EV)の分野でも欧州企業から将来性が最も高いとの評価を受けた。

\

会計監査大手アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)が欧州の自動車・部品メーカー307社を対象に実施したアンケート調査によると、事業の現状が「極めて良好」と回答した独企業の割合は46%に達し、欧州平均の33%を大幅に上回った。今後6カ月の見通しに関しては「極めて良好」が11%にとどまるものの、「良好」は78%と多く、景況感は良好だ。

\

各国の自動車産業立地競争力に関する質問でもドイツは「技術革新力」「品質」「生産性」の3分野でダントツ1位の評価を受けた(グラフを参照)。「生産コスト」に関しては中国、インドに次ぐ3位となったものの、人件費の高さを踏まえると極めて良好な結果と言える。

\

調査を担当したE&Yのパートナー、ペーター・フース氏は独自動車産業の成功の秘訣を高級車分野での強みにあると指摘。収益力の高いプレミアム部門で主導的な立場に立つ企業は、同分野で獲得した最先端技術を低コストで小型車に導入できるとの見方を示した。

\

一方、「電気自動車で世界をリードするメーカーとなるうえでチャンスが最も大きい国はどこですか」との質問ではドイツとの回答が51%に達し、2位の中国(同30%)、3位の日本(27%)に大きく水をあけた。メーカーとサプライヤーがEV用駆動装置の研究開発に巨額の投資をしていることが高く評価されたもようだ。EVの本格普及が2020年過ぎになると予想されるため、バッテリー分野などでドイツ企業が現在、後れを取っていることは大きな問題とみなされていない。

\

\

独メーカーの生産能力

\

2015年までに430万台拡大

\

\

ベルギッシュ・グラートバッハにある経済専門大学(FHDW)付属の自動車研究センターCAMが作成した最新の自動車メーカー競争力ランキング指数(最高100)をみると、VWは75.6となり、1位を獲得した。昨年トップのトヨタ自動車は8位(同42.8)へと急落している。大規模なリコールを実施したことで販売台数が減少したほか、利益も圧迫されて技術革新に回す力が弱まったと判断されたためだ。CAMのシュテファン・ブラッツェル所長はVWの強さの秘訣についてAFP通信に対し◇モジュール生産で収益力の強化とモデルの多様化を実現している◇世界最大の成長市場である中国で強い――と説明した。同時に同社の課題も指摘、具体的には◇VWブランドとシュコダブランドの差別化◇セアトブランドの黒字転換◇戦略提携したスズキとの関係を軌道に乗せること◇高級車ブランド・ポルシェの統合――を挙げた。

\

独メーカーは同調査でダイムラーが2位、BMWが4位と軒並み高い評価を受けている。

\

会計監査大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、独メーカーの世界自動車生産能力が2015年末までに1,660万台となり、2010年末から430万台拡大するとの予測を発表した。プラットフォーム共有戦略のほか、小型高級車(スモール・プレミアム)の投入で大都市圏のドライバー需要を掘り起こしていることが奏功。生産能力の大幅拡大にもかかわらず、工場稼働率は80~90%の高い水準を保つとしている。

\