今年1月に施行された特許薬の価格取り決めに関する法令(AMNOG)で審査の第1号となっていたアストラゼネカの抗血小板剤、「チカグレロル」(製品名:ブリリック)の査定結果が4日、発表された。それによると、既存薬よりも優れた治療効果があると認められるのは対象とする3種類の適応症のうち2種類にとどまる。これに対しアストラゼネカは、「比較に使用した既存薬が欧州医薬品庁(EMA)と異なり評価は不当」として、審査機関を強く批判している。
\新薬を査定する第3者機関の「保健衛生制度における品質・経済性研究所」(IQWiG)は、チカグレロル(アスピリン併用)は同薬が適応症とする急性冠動脈症候群(ACS)のうち、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)と不安定狭心症(UAP)に対しては既存薬より治療効果が高いと評価したものの、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では効果が認められないとの判断を示した。比較対象となった医薬品はクロピドグレル、プラスグレル(いずれもアスピリン併用)、アスピリンのみ(冠動脈バイパス手術を受けた患者)だった。
\アストラゼネカは査定結果に対し、プラスグレルは2年前に認可されたばかりの新薬で、チカグレロルの臨床試験当時に治験データを直接参照することは不可能だったと強く批判した。EMAもクロピドグレルとの比較に基づいて販売を認可したと指摘したうえで、プラスグレルを比較対象に選んだ共同委員会(医師・病院・健保の代表から成る委員会。IQWiGに査定・評価を委託する)のやり方は公平性に欠けるとの見方を示した。
\他の特許薬メーカーも共同委を批判している。ベーリンガー・インゲルハイムは8月、「(共同委員会から」提案された比較法では、既存薬より優れていることが証明できない。販売価格が抑えられるのは確実」として糖尿病治療薬「リナグリプチン」を独市場に投入しない方針を表明。ノバルティスも4月に認可されたばかりの高血圧治療薬「Rasiramlo」の独販売を8月末で中止した。
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