飲酒運転とスピード違反でレンタカーの全損事故を起こしたドライバーにレンタカー会社が損害賠償を請求していた係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は11日、「ドライバーの過失による事故は車両保険の補償対象外」とするレンタカー会社の貸渡約款は無効との判断を示した(訴訟番号 VI ZR 46/10)。保険契約法には過失の度合に応じて保険金額を査定することが定められており、「過失なら一律免責」とすることは認められないとの判断を示した。
\被告の男性は2008年6月、レンタカー大手のSixtで自動車を借り受けた。運転中に夫婦ゲンカを起こして腹立ちまぎれに居酒屋で飲酒。その後、再び運転しスピードを出し過ぎてカーブを曲がり切れず、道路脇の木に衝突した。事故当時の血中アルコール濃度は2.96パーミルで、泥酔状態だった。
\事故車両の損害額は1万6,000ユーロで、全損と判断された。Sixtは男性に損害の全額負担を求めたものの、拒否されたため裁判を起こした。前審のケルン高等裁判所は、免責額(自己負担額)770ユーロのみの支払いを男性に命じたが、Sixt側がこれを不服として上告していた。
\BGHの裁判官は判決理由で、重過失の場合は保険金が全く下りないという従来ルールは08年施行の改正保険契約法(VVG)で、過失の度合いに応じて保険金を減額する方式に改められたと指摘。Sixtの賃渡約款は効力を持たないと言い渡した。そのうえで、今回の係争ではドライバーの過失の度合いが解明されていないとして、ケルン高等裁判所に審理を差し戻した。
\過度の飲酒で重大な過失が認められる場合、保険会社は保険金の支払いを全額拒否できる(『ドイツ経済ニュース』7月6日号参照)。今回の案件で被告の男性は飲酒運転とスピード違反という2つの法令違反を犯しており、損害の全額自己負担を言い渡される可能性がある。
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