被用者が育児休暇期間を延長する場合は雇用主の承認を得なければならない。これは育児休暇法16条3項に定められた規則である。では、雇用主にはいかなる場合でも申請を拒否する権利があるのだろうか。この問題について最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が18日に判決(9 AZR 315/10)を下したのでここで取り上げる。
\裁判を起こしたのは2008年1月3日に第5子が出生したことを受けて育児休暇を取得した女性。育児休暇の期限は2009年1月2日(金)となっていたが、健康がすぐれないため1年間の延長を申請した。
\雇用主はこの申請を却下したものの、原告女性は育休明けの1月5日(月)以降、出社しなかった。雇用主はこれを無断欠勤と判断、警告処分を下した。原告はこれを不当として提訴した。
\第1審は原告の全面勝訴を言い渡した。これに対し第2審のバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所フライブルク支部は、「雇用主は権利の濫用に当たらない限り有給休暇の延長申請を自由に拒否できる」として、逆転敗訴判決を下した。
\一方、最終審のBAGは契約当事者の一方による決定は「公正な裁量に従って(nach billigem Ermessen)」下された場合にのみ拘束力を持つとした民法典315条3項の規定を指摘。雇用主は育休延長申請の可否を包括的かつ公正な立場で判断しなければならないとの見解を提示した。そのうえで、第2審では雇用主が公正な裁量に従って判断したかどうの事実認定がなされていないとして、同審への差し戻しを決定した。
\ \★公正な裁量(billiges Ermessen)
\契約当事者の一方が決定を行う場合に拘束される原則。契約に明記されていない事柄を決定する際に適用される。その意味するところは、契約当事者の一方が自らの利害のみに基づいて決定するのでなく、すべての事実を踏まえたうえで公正な立場から決定しなければならないというもの。民法典315条に記されており、民事裁判でしばしば適用される。
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