連邦政府は10月26日の閣議でドイツの人口動向の現状と今後の見通しに関するレポートを了承した。同レポートは出生率の低迷と平均寿命の上昇を背景に人口減少が長期的に続き、社会の幅広い分野に影響が出ると予想。そうしたなかで経済成長や豊かな社会を維持するには包括的な対策が必要だと提言している。政府はこれを参考に人口減への対応戦略を策定し、来春に発表する予定だ。
\ドイツの人口は2002年の8,253万7,000人をピークに減少へと転じ、2010年は8,175万2,000人まで後退した。レポートによると、(1)出生率が現在とほぼ同じ1.4%で推移する(2)平均寿命が緩やかに上昇を続ける(3)国外からの移民の数が毎年10万人のペースで純増していく――と仮定した場合、人口は2030年に7,735万人、2060年には6,465万1,000人まで減少する。現在よりも1,700万人、率にして21%少ない計算だ。移民の純増数を年20万人としても12%減の7,000万人に後退する。
\人口の縮小は高齢化の進展を随伴する。全人口に占める20~64歳(生産年齢人口)の割合は2010年の61%から2030年に55%、2060年には50%へと低下。20歳未満(年少人口)も2010年の19%に対し、2030年は17%、2060年は16%と後退が続く。これに対し65歳以上の高齢者は現在の21%から2030年に29%、2060年には34%へと大きく拡大する。生産年齢人口に対する被扶養人口(老齢人口と年少人口の合計)の比率は現在の65%から2030年に83.5%、2060年には98%へと拡大。生産年齢人口1人につき被扶養人口1人を養う計算となる。
\生産年齢人口は現在の約5,000万人から2030年に4,200万人に減少、2060年には3,300万人まで落ち込む。また、労働力の中核をなす30~49歳の年齢層が生産年齢人口に占める割合は2010年の47%から2020年には40%へと低下。一方、50~64歳の高齢労働者では同比率が33%から40%へと上昇する。
\地域別では産業の乏しい東部で減少が激しい。一方、バイエルンやバーデン・ヴュルテンベルクなど南部の州とベルリン、ハンブルク、ブレーメンの3都市州では縮小が小幅にとどまる。
\人口減少と高齢化は経済発展のマイナス要因となる。国内需要が縮小するうえ、企業も事業の拡大に必要な人材を確保しにくくなるためだ。
\レポートはこうした問題に対処するためのおおまかな枠組みを提示。具体的には◇教育や研修を通した労働力の質の向上◇技術力の向上◇予防医療や健康の促進◇未就労の女性や移民、高齢者、障害者を労働力として活用する――などを打ち出した。女性の活用については家庭と仕事の両立支援を重視している。
\