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2011/10/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

求人の際は障害者の採用検討を、違反すると差別訴訟の恐れ

この記事の要約

ドイツの第9社会法典(SGBⅨ)には障害者の処遇や保護に関するルールがまとめられている。その81条1項のなかにこんな規定がある。「雇用主には空席となったポストに障害者、特に労働局に失業者ないし求人者として登録している障害 […]

ドイツの第9社会法典(SGBⅨ)には障害者の処遇や保護に関するルールがまとめられている。その81条1項のなかにこんな規定がある。「雇用主には空席となったポストに障害者、特に労働局に失業者ないし求人者として登録している障害者を採用できないかどうかを検討する義務がある。(このため)雇用主は早い段階で労働局とコンタクトを取らなければならない」。おそらく世の経営者の多くが知らない法律である。だが、この義務を怠ると差別訴訟を起こされ、損害賠償を支払う破目に陥るので注意が必要だ。ここでは最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日に下した判決(訴訟番号: 8 AZR 608/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは重度の障害を持つ男性。とある自治体が育児休業を取得する職員の代替職員を募集していたため応募したところ、採用されなかった。自治体は応募の際にSGBⅨ81項1条の義務を怠っていたため、同男性は障害者差別だと主張。一般平等待遇法(AGG)15条2項の規定を根拠に損害賠償訴訟を起こした。

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原告は第1、第2審で敗訴したものの、最終審のBAGは逆転勝訴判決を下した。判決理由で裁判官はSGBⅨ81項1条の義務を怠った場合は障害者差別の間接証拠とみなされ、雇用主には差別がなかったことを証明する義務が発生すると指摘。被告自治体はその証明をできなかったため、損害賠償を支払う義務があるとの判断を示した。賠償額については下級審のバーデン・ヴュルテンベルク州労働裁判所に決定するよう命じている。

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