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2011/11/9

経済産業情報

電力大手が政府を提訴へ、原発廃止で

この記事の要約

連邦政府の原発廃止前倒しで損害を被った電力大手が法的措置の準備を進めている。2日付『ハンデルスブラット』紙によると、スウェーデン系のバッテンフォールは、政府の行為は投資保護に関する国際協定に違反するとして、年内にも世界銀 […]

連邦政府の原発廃止前倒しで損害を被った電力大手が法的措置の準備を進めている。2日付『ハンデルスブラット』紙によると、スウェーデン系のバッテンフォールは、政府の行為は投資保護に関する国際協定に違反するとして、年内にも世界銀行の国際投資紛争解決センター(ICSID)に提訴する意向だ。またエーオンとRWEは、原発廃止は基本法(憲法)で保障された所有権の侵害に当たるとして、連邦憲法裁判所に違憲訴訟を起こす方針。各社はメディアに対し訴訟を準備していることは認めたものの、詳細は決まっていないとしてコメントを控えている。

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連邦政府が原発廃止前倒しを決定したことで、原発を運営するエーオン、バッテンフォール、RWE、EnBWは大きな損害を被っている。

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連邦政府は今春、福島原発事故を受けて原発稼働期間の延長政策を凍結し、老朽化した原発7基の操業を一時停止させた。対象7基のうちブルンスビュッテルとクリュンメルの2基を運営するバッテンフォールは、凍結措置が解除されれば稼働を再開できるとの見通しに立ち今夏に7億ユーロを投じて両原発の修繕を行った。しかし、この直後に政府が老朽原発の稼働を再開せず廃炉とすることを決定したため、同社は第2四半期決算で11億ユーロの特損計上を余儀なくされた。RWEも22%の減益(1-6月期)となり、エーオン(4-6月期)とEnBW(1-6月期)は赤字に転落した。

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バッテンフォールの担当者は、「我々が政府から賠償金を得られれば、国内で事業を展開する残り3社も政府への圧力を高められる」と指摘。ICSIDへの提訴は競合にもプラスになるとの見方を示した。また、エーオンの担当者は「我々は原発廃止を撤回させたいのではない。被った損害を補償してもらいたいだけだ」と述べ、法廷闘争に意欲を示した。

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