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2011/11/16

経済産業情報

異性鏡像体を効率的に分離するナノ構造開発

この記事の要約

2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)を含む混合気体で、それぞれのエナンチオマーを効率的に分離する新たな技術の開発に、カールスルーエ工科大学(KIT)とボーフム大学(RUB)の合同研究チームが成功した。金属有機構造体(MO […]

2種類の鏡像異性体(エナンチオマー)を含む混合気体で、それぞれのエナンチオマーを効率的に分離する新たな技術の開発に、カールスルーエ工科大学(KIT)とボーフム大学(RUB)の合同研究チームが成功した。金属有機構造体(MOF)と呼ばれるナノ構造を利用するのがポイントで、一方のエナンチオマーの立体構造に合うように骨格を制御。マッチする分子だけが吸着され、しない分子はふるいに引っかからず素通りするようにした。

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エナンチオマーは、分子構造(原子の数・種類・結合順)は同じだが立体配置が異なる立体異性体。互いに鏡像関係にあり、重ね合わせることができない。融点、沸点、密度といったほとんどの物理的性質は全く変わらないが、医薬品分野では問題を引き起こすことがある。機能性生体分子のほとんどが片方のエナンチオマーとのみ特異的に結びつくためだ。結び付かないエナンチオマーは人体に害を及ぼす可能性があり、必要なエナンチオマーのみを分離することは安全な新薬を開発するうえで欠かせない。分離手段として光学分割などの手法が確立されているものの、手間やコストがかかるという難点がある。

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KITとRUBの研究チームはこうした事情を踏まえ、MOFを使った安価で簡単な分離法の開発に取り組んだ。MOFは金属クラスターとそれを架橋する有機配位子によって構成される物質で、細孔空間の形状、大きさ、化学的環境を変えることで特性を自在に制御できる。

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チームは今回、多価アルコールの一種であるヘキサンジオールを使って実験を実施。時間の経過に伴う両エナンチオマーの吸着度合いを測定したところ、完全な分離には至らなかったものの、吸着度に明らかな違いが認められた。

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研究の成果は『Angewandte Chemie』誌に掲載された。

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