ドイツの州立銀行業界を先週(11月第3週)、2つのニュースに揺さぶられた。1つは格付け大手ムーディーズによる大幅な格下げ、もう1つはヘッセン州がヘッセン・テューリンゲン州立銀行Helabaからの撤退を視野に入れていることが明らかになったことだ。州立銀の多くは金融危機の発生後に経営が悪化。欧州連合(EU)の欧州委員会からは公的支援を受ける条件として事業の大幅縮小や分割を命じられており、業界の先行き不透明感は一段と強まってきた。
\ムーディーズは16日、ドイツの公的金融機関の格付けを引き下げると発表した。1月に施行された独金融再建法(RStruktG)と、欧州委員会が金融機関への公的支援に厳しい条件を課していることを踏まえ、公的金融機関はこれまでよりも州政府などの支援を受けにくくなったと判断。州立銀行を中心に格付けを大幅に引き下げた。
\格下げ幅が最も大きかったのはバイエルン州立銀行(A1からBaa1)とバーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(Aa2からA2)、ノルトLB(Aa2からA2)の3行で、一気に3段階引き下げられた。Helaba(Aa2からA1)とザールLB(A1からA3)、HSHノルトバンク(A3からBaa2)は2段階、貯蓄銀行のファンド会社DekaBank(Aa2からAa3)は1段階引き下げられている。ベルリン州立銀行(A1)は州立銀で唯一、格付けを据え置かれた。また、分割・解体予定のノルトライン・ヴェストファーレン州立銀行ヴェストLBは組織の先行きが定まっていないため格付け調査が見送られた。
\金融再建法は経営破たんした巨大銀行を国や州が税金を投入して直接救済することを回避するために制定された法律で、金融機関は自己責任で再建することを義務づけられる。このため社債保有者などの債権者は大幅な債権放棄を余儀なくされる公算が高く、州政府の出資を受ける州立銀も投資先としてのリスクが高まった。ムーディーズはこれまで、州立銀は公的支援を受けられるとの前提に立ち、長期格付けを最大8段階、上乗せしてきた。今回の格付けでは上乗せ幅を最大5段階に引き下げた。
\格下げとなった州立銀は資金調達コストが上昇するため、経営がこれまで以上に厳しくなる恐れがある。
\ \「州に必要なのは政策金融事業のみ」=ヘッセン州経済相
\ \ヘッセン州のディーター・ポッシュ経済相は17日、ヘッセン・テューリンゲン貯蓄銀行連合会の会合でHelabaからの撤退を中長期的な課題として視野に入れていることを明らかにした。今後予想されるドイツの州立銀行の再編でHelabaは多くの州の貯蓄銀行の中央機関になる可能性があり、ヘッセン州の経済振興を図るという州にとっての重要な機能を発揮しにくくなるという事情が背景にある。Helabaから資本を引き上げる場合は、同行の政策金融部門ヘッセン経済インフラ銀行(Wirtschafts- und Infrastrukturbank Hessen =WIBank=)を分離・独立させる考え。
\Helabaはヘッセン州とテューリンゲン州の州立銀行で、政策金融のほか、大企業・銀行・機関投資家向け事業と貯蓄銀行向け事業を展開している。出資比率は両州の貯蓄銀行連合会が85%で、残りはヘッセン州が10%、テューリンゲン州が5%となっている。
\ドイツの州立銀行の多くは金融危機で大きな打撃を受け、出資者である州や各地の貯蓄銀行の支援を受けた。各州政府にとっては財政の大きなリスク要因となっている。
\ポッシュ経済相はメディアに対し、Helabaへの出資は政策金融事業があるために行っているに過ぎないと明言。Helabaがヘッセンとテューリンゲン州だけでなく他州の貯蓄銀行の中央機関になるのであれば、出資を続ける義務はないとの立場を示した。
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