格付け機関の高い評価を信用してリーマン・ブラザースの証券商品を購入したものの、同社の破たんで損害を被ったとして、購入者のドイツ人男性が米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)を相手取って損害賠償を求めている裁判で、フランクフルト高等裁判所は11月28日、ドイツ法廷で審理が可能との判断を示した(訴訟番号:21U 23/11)。判決理由で裁判官は、同社は民事訴訟法23条で規定する「財産所在地」の条件を満たしていると言い渡した。
\民事訴訟では原則として、被告の住所がある土地の裁判所が管轄する決まりとなっている。このため前審のフランクフルト地方裁判所は、「被告(S&P)はドイツに所在地のない米企業であり、ドイツの裁判所は管轄外」として、審理請求を却下した。これに対しフランクフルト高裁の裁判官は、国内に住所がない者であっても差し押さえ可能な財産が国内にある場合は民事訴訟法23条により財産権に関する訴えを財産所在地の裁判所に提起できる」と指摘。S&Pにはフランクフルトの企業と取り交わした定期購読契約という形で「少なからぬ額」の財産が存在しており、当該条項の規定を満たすとの判断を示した。審理はフランクフルト地裁に差し戻した。
\今回の係争を受けて、誤った格付けに基づいて商品を購入した投資家が今後、次々と裁判を起こす可能性もある。
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