様々な反応の触媒として使わるパラジウム(Pd)の化合物で、強磁性を発現する新たな構造を合成することにオルデンブルク大学などの研究チームが世界で初めて成功した。強磁性を示すPd化合物はこれまで知られておらず、新たな記憶媒体や永久磁石への応用に期待がかかる。
\Pdは白金(Pt)やニッケル(Ni)と同じ第10族元素に属する。Ptと性質が似通っており、反応性が低い、単体では常磁性(磁場を印加するとその方向に弱く磁化する性質)といった特徴があるほか、Niとの合金は金に代わるメッキ材として使用される。排ガスの浄化触媒としてなくてはならない存在だ。
\オルデンブルク大とミュンスター大の研究チームは今回、Pdと三酸化硫黄(無水硫酸:PO3)を高温で反応させ、分子式Pd(S2O7)であらわされる新たなパラジウム・硫酸化合物を合成。この分子構造を調べたところ、Pdイオンと6つの酸素原子が正八面体を構成していた。これまで知られているPd化合物はほぼ例外なく2次元平面構造をとっており、3次元構造が確認されたのは今回が初めてだ。同化合物は常温では常磁性体だったが、温度を11.7Kの極低温まで下げたところ強磁性を示した。
\研究の結果は『Angewandte Chemie(応用化学)』誌のオンライン版に先行掲載された。同誌の審査員はこの研究に対し「極めて優れた成果」との評価を下し、印刷版(2月号)でタイトルテーマとすることを決めた。
\